「ナル、やっぱりちょっと買いすぎたんじゃない??こんなにぼく達だけじゃ食べきれないよ」


「大丈夫大丈夫~、そうなってから考えればいいって~」


「瀬那、それ切ってよ。俺生の肉とか怖くて切れなーい」


「カナデ手汚したくないだけでしょ。そんな棒読みで言われても……」


ワイワイと楽しくみんなで料理をする。

それは、今日のクリスマスパーティーのための。


「玲斗~!はいっ味見!あ~ん」


定食屋をしているナルほどではないにしろ、一応全員そこそこ料理はできるほう。

そのため、全員で楽しくパーティーのための料理を作っている。

まるで学校の調理実習みたいだ。

そう思いながら食材を切っていると、さっきまでりょーすけと食材の量がどーのこーのと話していたナルがスプーン片手に俺のところに来た。

どーせしょーもないことだろうと横目でチラリと見た後無視をしていると、案の定しょーもないことだったようで、ナルはソースの乗ったスプーンを俺に向けて差し出している。


「りょーすけ、これ味見してくれよ。はい、あーん」


「玲斗、俺のあーんは無視ですか、そうですか」


「アッハッハッ!!レイナイススルースキル!!」


「ナルざまぁ!!」


そんなナルを無視してりょーすけに声をかけるとデカい身長で落ち込み出した。

突然声をかけたりょーすけは戸惑っているが、瀬那とカナは笑いを我慢することなく爆笑している。


「ホント……俺達クリスマスとか関係ねーよな」


せっかくのクリスマス。

それなのに俺達のテンションはいつもと変わらず。

さすがlibertyって感じだよな。

俺はそう思い、緩む口元のまま料理を再開した。




「よっしゃ完成!!」


しばらくして料理は全て揃い、俺達はすでに飾り付けを終えている部屋に料理を運んだ。


「それじゃあそろそろ始め……」


全てが整った部屋をぐるりと見渡したカナがパーティーを開始しよう、と言葉を発した。

けれどその言葉は途中で遮られた。


「あれ~??奏ちゃん“アレ”忘れちゃったの~??」


目の前でヘラヘラ笑うナルによって。


「チッ……」


包み隠さず舌打ちをかましたカナに、ナルは臆することなく笑い続けている。


「こういうときのナルって本当に最強だと昔からずっと思ってたよ」


あまり気乗りしないのか、俺の隣でボソッとそう呟いたりょーすけの顔は上手に笑えていなかった。

普段のあの笑顔はいったいどこへやら。


「さあ~お着替えしましょ??」


「ちょっ!!ごめんって!!待って待ってボクだけ首根っこ掴まないでっ!!……あっこれヤバい……あれ??目の前にお花畑が……」


ハートを飛ばすようにパチンとウィンクをしてきたナル。

そんなナルを「うわー引くわー」という顔で見ていた瀬那だったが、それに気付いたナルが何のためらいもなく瀬那の襟首を掴んで引きずりながら歩き出した。

バタバタと暴れていた瀬那は気付けば青白い顔でうなだれていた。


「次の犠牲にならねーためにも、しょうがねーから行くか」


そう言うと、カナもりょーすけも無言で頷いた。

“アレ”は嫌だけど瀬那の二の舞はごめんだもんな。

それにしても……尊い命だった……。




「勝手に殺すな……っていうかホントにこれ着たままするの??」


いつの間にか復活していた瀬那は若干不機嫌そうな顔をしている。


「うわー……これ大丈夫??おかしくない??」


心配そうに苦笑いをしているりょーすけだが、りょーすけの心配の元凶であるものはりょーすけに似合いすぎて、違和感マジ仕事しろ状態だ。


「………」


カナは……あっこれもうダメだ。

だってこれ生きてる人間がしちゃいけねー目だもん。


「みんな似合ってるよ~コスプレ」


そう、俺達が今着替えたのは昨日買ったコスプレ。

モミの木の瀬那、ベージュのトナカイのりょーすけ、ブラウンのトナカイのカナ。

3人はナルの「似合ってるよ」発言に顔を歪めた。


「ナル見てみろ、これが俺達の気持ちだ」


サンタの衣装を着ている俺は3人と同じ気持ちのため、白い手袋を付けた指で3人を指差してナルにそう言った。


「そんなに照れなくてもいいじゃん!まあ、俺が一番似合ってるけどね~」


俺の言葉を笑い飛ばす目の前のミニスカサンタのナル。

お前一回鏡を見てからそれ言えよ。

筋肉付いている足を見せられても誰得だって話だわ。