あんな頻繁に連絡を取り合っていたのに、高2の4月を最後に連絡取ってないよ。
「先生のことを忘れる日が来ようとは……」
ありえるはずなかったのに、実際今はそうだ。
「初恋って叶わないものだよね~」
「先生が初恋相手なんですか??」
独り言のはずだったのに、その言葉に対して質問をしてくる声が聞こえた。
「蛍ちゃん……」
振り返ると、そこにいたのは蛍ちゃん。
「何々~、聞いちゃってた~??キャー照れる~!」
まさか蛍ちゃんに聞かれているとは知らず、俺は焦った。
けどすぐにいつもの調子で冗談ぽくおどけて見せる。
するといつものように冷たい言葉で罵って、俺の言葉なんてなかったことにしてくれるだろう。
「松岡先輩」
だけど違った。
蛍ちゃんのその声は、真剣なもので。
蛍ちゃんのその目は、真っ直ぐだった。
「……蛍ちゃんには適わないな」
今まで何人もと付き合ってきたが、蛍ちゃんはそのどれもと違い、俺を追い詰める。
こんな風に俺を追い詰められる女の子なんて、蛍ちゃんくらいだよ。
「そろそろ潮時だな……」
前々から蛍ちゃんが俺の過去を知りたいと思っていたのはわかっていた。
だけど俺がそれを聞かせないようにしていた。
でももう黙っておくのも限界だよね。
「蛍ちゃん、座って話そうか……」
「松岡君??」
きっと長くなる。
そう思って提案したそのとき。
もう何ヶ月も聞いていなかった声が俺の名前を呼んだ。
驚きのあまり勢いよく振り返る。
「やっぱり松岡君だ!」
「多部っ……先生っ……」
まさに今から話そうとしていた張本人の登場に、俺は内心焦っていた。
「松岡先輩??……」
だから気付かなかった。
蛍ちゃんが眉をひそめて悲しそうな顔で俺を見ていることなんて。
「先生っ……久しぶり~元気だった~??」
「ええ、松岡君も元気そうね」
「もちろん!」
動揺を隠すように、俺は無理に笑顔作り、いつものようにヘラヘラとした態度をする。
「ふふっ、変わらないわね」
そう言って口元を抑えて笑う先生。
先生こそ変わっていない。
「先生、彼氏とはどう??」
そんなこと聞いてどうするんだ。
なのにわざわざ聞いてしまうのは、俺がまだ子供だから??
「実はね、4月に結婚することになったの」
「結……婚??……」
「そうよ。松岡君にも出席して欲しいわ」
「へ~……いいの??うん、行きたい行きたい」
あれ??何でかな??
「よかった!これ招待状ね」
おかしい。
「ありがとう~」
何で、こんな気持ちに……。
「あら??松岡君の彼女??」
1人でグルグル考えていると、先生が傍にいた蛍ちゃんを見て微笑んだ。
「ほら蛍ちゃん彼女に見えるって~」
先生の後に続くように笑って蛍ちゃんにそう言う。
「松岡先輩、早よ帰らへんと部長に怒られてしまいます」
「えっ??」
すると突然、手を強く引かれた。
驚いたのは俺だけじゃなく先生も。
「先生またね~!結婚式絶対行くから~!」
どんどん俺の手を引いて歩いていく蛍ちゃん。
俺は意味がわからなかったけど、とりあえず先生に早口に挨拶をし、そのまま連れられて行く。
学校に戻ってきたところで、ようやくその手は離された。
「蛍ちゃんどうしたの??」
「すみません……」
「あっ……」
それだけ言うと、さっさと中に入って行ってしまった。
「別に怒ってはないんだけどな~……」
結局話せなかったな、俺の過去。
「でもまあ……いいか」
今はまだそのときじゃない。
本当はまだ心の準備ができていなかったしね。
「嫌われる準備が……ね……」
話せばきっと……いや、確実に嫌われるだろう。
だって、先生を好きだっただけならまだしも、好きでもない人をとっかえひっかえしていたようなやつだもんね。
俺が女の子ならそんな男は軽蔑する。
それをわかっているから、俺は怖くてずっと言えなかった。
「だけどすぐにそのときは来るよね……」
だから早く準備しておかなきゃね。
「うーん……考えただけで……辛い……」
12月の風はあまりに冷たく俺の頬を掠めていった。
「先生のことを忘れる日が来ようとは……」
ありえるはずなかったのに、実際今はそうだ。
「初恋って叶わないものだよね~」
「先生が初恋相手なんですか??」
独り言のはずだったのに、その言葉に対して質問をしてくる声が聞こえた。
「蛍ちゃん……」
振り返ると、そこにいたのは蛍ちゃん。
「何々~、聞いちゃってた~??キャー照れる~!」
まさか蛍ちゃんに聞かれているとは知らず、俺は焦った。
けどすぐにいつもの調子で冗談ぽくおどけて見せる。
するといつものように冷たい言葉で罵って、俺の言葉なんてなかったことにしてくれるだろう。
「松岡先輩」
だけど違った。
蛍ちゃんのその声は、真剣なもので。
蛍ちゃんのその目は、真っ直ぐだった。
「……蛍ちゃんには適わないな」
今まで何人もと付き合ってきたが、蛍ちゃんはそのどれもと違い、俺を追い詰める。
こんな風に俺を追い詰められる女の子なんて、蛍ちゃんくらいだよ。
「そろそろ潮時だな……」
前々から蛍ちゃんが俺の過去を知りたいと思っていたのはわかっていた。
だけど俺がそれを聞かせないようにしていた。
でももう黙っておくのも限界だよね。
「蛍ちゃん、座って話そうか……」
「松岡君??」
きっと長くなる。
そう思って提案したそのとき。
もう何ヶ月も聞いていなかった声が俺の名前を呼んだ。
驚きのあまり勢いよく振り返る。
「やっぱり松岡君だ!」
「多部っ……先生っ……」
まさに今から話そうとしていた張本人の登場に、俺は内心焦っていた。
「松岡先輩??……」
だから気付かなかった。
蛍ちゃんが眉をひそめて悲しそうな顔で俺を見ていることなんて。
「先生っ……久しぶり~元気だった~??」
「ええ、松岡君も元気そうね」
「もちろん!」
動揺を隠すように、俺は無理に笑顔作り、いつものようにヘラヘラとした態度をする。
「ふふっ、変わらないわね」
そう言って口元を抑えて笑う先生。
先生こそ変わっていない。
「先生、彼氏とはどう??」
そんなこと聞いてどうするんだ。
なのにわざわざ聞いてしまうのは、俺がまだ子供だから??
「実はね、4月に結婚することになったの」
「結……婚??……」
「そうよ。松岡君にも出席して欲しいわ」
「へ~……いいの??うん、行きたい行きたい」
あれ??何でかな??
「よかった!これ招待状ね」
おかしい。
「ありがとう~」
何で、こんな気持ちに……。
「あら??松岡君の彼女??」
1人でグルグル考えていると、先生が傍にいた蛍ちゃんを見て微笑んだ。
「ほら蛍ちゃん彼女に見えるって~」
先生の後に続くように笑って蛍ちゃんにそう言う。
「松岡先輩、早よ帰らへんと部長に怒られてしまいます」
「えっ??」
すると突然、手を強く引かれた。
驚いたのは俺だけじゃなく先生も。
「先生またね~!結婚式絶対行くから~!」
どんどん俺の手を引いて歩いていく蛍ちゃん。
俺は意味がわからなかったけど、とりあえず先生に早口に挨拶をし、そのまま連れられて行く。
学校に戻ってきたところで、ようやくその手は離された。
「蛍ちゃんどうしたの??」
「すみません……」
「あっ……」
それだけ言うと、さっさと中に入って行ってしまった。
「別に怒ってはないんだけどな~……」
結局話せなかったな、俺の過去。
「でもまあ……いいか」
今はまだそのときじゃない。
本当はまだ心の準備ができていなかったしね。
「嫌われる準備が……ね……」
話せばきっと……いや、確実に嫌われるだろう。
だって、先生を好きだっただけならまだしも、好きでもない人をとっかえひっかえしていたようなやつだもんね。
俺が女の子ならそんな男は軽蔑する。
それをわかっているから、俺は怖くてずっと言えなかった。
「だけどすぐにそのときは来るよね……」
だから早く準備しておかなきゃね。
「うーん……考えただけで……辛い……」
12月の風はあまりに冷たく俺の頬を掠めていった。