「カナデ!!いい加減にしなよ!!」
「リョー!?」
「本当はもう気付いているんでしょ!!」
「ナル!?」
瑠美ちゃんのいる観覧席とは別方向から聞こえた声。
そこに目を向けると、リョーとナルが観覧席の方から俺を見下ろしていた。
「どうして2人がここに……」
「カナ!!1人で勝手にいろいろ考えんな!!」
「玲斗!?」
「早く素直に自分の気持ち受け入れなよ!!」
「瀬那!?」
そしてまた別方向から聞こえたのは玲斗と瀬那の声。
リョーとナルだけじゃなく、玲斗と瀬那まで……。
「どうしてっ……どうしてみんなここにいるのっ!?……俺のことなんて放っておいてくれていいのにっ!!」
自分の幸せだけを考えてよ……。
自分が過去から断ち切られて幸せになれることだけを考えて……。
俺のことなんて考えなくていいからっ……。
「放っておけるわけありません!!」
「!!」
顔を覆って俯いた俺に、瑠美ちゃんが言った。
「先輩が幸せになるのをっ……先輩が走るのをっ……誰よりもずっと待っていたのは誰だと思っているんですか!!?」
「っ!!?」
誰よりも、俺が走るのを待ってくれていたのは……。
それは……。
「カナデ!!」
「カナ!!」
「カナデ!!」
「奏ちゃん!!」
リョー、玲斗、瀬那、ナル……。
libertyのみんな……。
「だけどっ……母さんと兄さんを苦しめるのはっ……」
「違います!!」
違う??……。
何が違うっていうの??……。
「苦しめてなんかいません!!」
「そんなのっ瑠美ちゃんにわかるわけ……」
「わかるんじゃないです!!わかったんです!!」
わかった??……。
どういうこと??……。
「昨日、先輩を追いかけているとき、先輩の名前を叫んでいた私に声をかけてくれた人がいました。先輩のお母さんです」
「!?……母さん??……」
「勝手だとは思いましたけど先輩のお母さんに事情を話しました!!それを聴いた先輩のお母さんは言っていました!!“また走ってほしい”って!!」
そんなわけっ……。
だって陸上は……短距離は父さんからのもので……。
「“走っている姿が私達家族を支えてくれていた”って!!」
「っ!!?」
俺が走ることで母さんと兄さんを支えていた……。
そんな……。
まさかそんなこと……。
「お菓子作りも同じです!!“本当は辞めてほしくなんてなかった。もう一度、奏のお菓子が食べたい”って!!」
「母さん……兄さん……」
「“もう一度、奏の走る姿が見たい”って!!」
「っ!!……」
苦しめていたと思っていた……。
父さんからのものは母さんと兄さんを……。
だから俺は、父さんからのものを全て辞めたんだ……。
だけど……それは……。
「本当は……苦しめてなんか……なかったんだ……」
俺が勘違いしていただけだった。
母さんと兄さんを苦しめてなんかいなかった。
「走ることを怖いと思っていても、本当はずっと……本心では……心の底から走りたいと思っていたんじゃないんですか!?」
「!!」
「だからもうっ逃げないでっ!!偽ったりしないでっ!!先輩が走りたいと思っているその気持ちを無理やり無くそうとしないでっ!!」
「瑠美ちゃんっ……」
涙を流しながら俺に訴えかけるその姿に、俺も涙が溢れそうになる。
俺のためにこんなにも……。
「みんな……お願いがあるんだ」
だから俺は決心した。
もう逃げないと。
そのために、俺がすること、それは……。
「リョー!?」
「本当はもう気付いているんでしょ!!」
「ナル!?」
瑠美ちゃんのいる観覧席とは別方向から聞こえた声。
そこに目を向けると、リョーとナルが観覧席の方から俺を見下ろしていた。
「どうして2人がここに……」
「カナ!!1人で勝手にいろいろ考えんな!!」
「玲斗!?」
「早く素直に自分の気持ち受け入れなよ!!」
「瀬那!?」
そしてまた別方向から聞こえたのは玲斗と瀬那の声。
リョーとナルだけじゃなく、玲斗と瀬那まで……。
「どうしてっ……どうしてみんなここにいるのっ!?……俺のことなんて放っておいてくれていいのにっ!!」
自分の幸せだけを考えてよ……。
自分が過去から断ち切られて幸せになれることだけを考えて……。
俺のことなんて考えなくていいからっ……。
「放っておけるわけありません!!」
「!!」
顔を覆って俯いた俺に、瑠美ちゃんが言った。
「先輩が幸せになるのをっ……先輩が走るのをっ……誰よりもずっと待っていたのは誰だと思っているんですか!!?」
「っ!!?」
誰よりも、俺が走るのを待ってくれていたのは……。
それは……。
「カナデ!!」
「カナ!!」
「カナデ!!」
「奏ちゃん!!」
リョー、玲斗、瀬那、ナル……。
libertyのみんな……。
「だけどっ……母さんと兄さんを苦しめるのはっ……」
「違います!!」
違う??……。
何が違うっていうの??……。
「苦しめてなんかいません!!」
「そんなのっ瑠美ちゃんにわかるわけ……」
「わかるんじゃないです!!わかったんです!!」
わかった??……。
どういうこと??……。
「昨日、先輩を追いかけているとき、先輩の名前を叫んでいた私に声をかけてくれた人がいました。先輩のお母さんです」
「!?……母さん??……」
「勝手だとは思いましたけど先輩のお母さんに事情を話しました!!それを聴いた先輩のお母さんは言っていました!!“また走ってほしい”って!!」
そんなわけっ……。
だって陸上は……短距離は父さんからのもので……。
「“走っている姿が私達家族を支えてくれていた”って!!」
「っ!!?」
俺が走ることで母さんと兄さんを支えていた……。
そんな……。
まさかそんなこと……。
「お菓子作りも同じです!!“本当は辞めてほしくなんてなかった。もう一度、奏のお菓子が食べたい”って!!」
「母さん……兄さん……」
「“もう一度、奏の走る姿が見たい”って!!」
「っ!!……」
苦しめていたと思っていた……。
父さんからのものは母さんと兄さんを……。
だから俺は、父さんからのものを全て辞めたんだ……。
だけど……それは……。
「本当は……苦しめてなんか……なかったんだ……」
俺が勘違いしていただけだった。
母さんと兄さんを苦しめてなんかいなかった。
「走ることを怖いと思っていても、本当はずっと……本心では……心の底から走りたいと思っていたんじゃないんですか!?」
「!!」
「だからもうっ逃げないでっ!!偽ったりしないでっ!!先輩が走りたいと思っているその気持ちを無理やり無くそうとしないでっ!!」
「瑠美ちゃんっ……」
涙を流しながら俺に訴えかけるその姿に、俺も涙が溢れそうになる。
俺のためにこんなにも……。
「みんな……お願いがあるんだ」
だから俺は決心した。
もう逃げないと。
そのために、俺がすること、それは……。
