「本当にありがとう。それじゃあまた明日」


もう1度感謝の言葉を伝え、私は4人と別れて、荒川先輩の待つ図書室へと向かった。


「あっ、小早川さん」


扉を開けると中はとても静か。

いるのはどうやら荒川先輩だけみたい。


「すみません遅くなって」


「ううん、全然大丈夫だよ」


読んでいた一冊の本をパタンと閉じて、荒川先輩はこちらを見て微笑んだ。


「それで整理する本はどこに……」


整理する本があるなら、カウンターの近くに普段なら積んで置いてある。

だけど今日はそこに本は一冊もない。

それならどこにあるのだろう。

そう思ってキョロキョロと図書室を見回す。


「えっとね……ないんだよ」


「えっ??」


困ったように頬をかく先輩。

ちょっと待って、ないってどういうこと??


「本当にごめんね」


「それじゃあどうして……」


嘘をついて私をここに呼んだのはどうして……。


「小早川さん、誕生日おめでとう」


「えっ……」


目の前に突き出されたのは可愛らしいラッピングのされた袋。

まさかこれってプレゼント??……。


「何がいいのかわからなくて、いろいろ店を回ってみたんだけどね、なかなか見つからなかったんだ。だけどたまたま行ったところでコレを見つけてね、これだって思って」


気に入ってくれるといいんだけど。

最後にそう付け足した先輩。

私は両手でそれを受け取って抱きしめるように胸に抱えた。


「嬉しいです……まさか知ってくれていたなんて思いませんでした……本当にありがとうございます」


嬉しくて嬉しくて仕方ない。

先輩はそんな私の言葉に安心したように笑った。







家に帰り、自室でもらったプレゼントを開けてみた。

舞璃からは卓上カレンダー。
杏奈からは置き時計。
瑠美からはチュロスとルームシューズ。
蛍からはマグカップとコースター。


「可愛い」


どれも私の好みに沿ったもので、とても嬉しく思った。


「荒川先輩からは何だろう??」


今日最後にプレゼントをくれた人のラッピングを解く。

すると中には……。


「バングルとブックカバー……」


入っていたのはパステルオレンジのバングルと小鹿の絵が描かれたブックカバー。

どちらもすごく可愛い。


「これを何件ものお店を回って見つけてくれたんだ……」


私のためにそこまでしてくれたことが嬉しい。

私のことを考えてくれたことが何よりも嬉しい。


「荒川先輩ありがとうございます……」


先輩と同じ左手首にバングルを着け、それをに向かって笑いかける。


貴方からのプレゼントにこんなにも胸が暖かくなっているなんてこと、貴方自身はきっと気付いていないんだろうなぁ。