部活を行うにはとても最適な季節。

特に武道場や体育館など、室内で行う運動部は日差しもないため本当に気持ちがいい。

それはもちろん部員だけでなく私達マネージャーも同じ。

少し肌寒いくらいの今の時期が1番仕事がしやすい。

だから私は今の時期が好き。


「お疲れ様です、ドリンクどうぞ」


「ありがとう」


それに11月20日の今日は私、小早川詩音の誕生日でもあるから。



「もっと足上げろ!!」


「もっと速く!!」


武道場に響く先輩達の声。

後輩達はそれに大きな声で返事をし、言われた通り動く。


「いいぞ!!そのまま!!」


拳が風を切り、ヒュンッという音が鳴る。

それがとてもかっこいい。


「休憩!!」


部長の声に部員達は一斉に動きを止める。

そして逆にマネージャーはここからが仕事。


「お疲れ様です。右手もう大丈夫ですか??」


笑顔でドリンクとタオルを渡し、部員の体調管理も怠らない。


「小早川さん」


「荒川先輩、お疲れ様です」


他のマネージャーと手分けして仕事をしていると、後ろから私を呼ぶ声がした。

振り返るとそれは荒川先輩で、いつものように爽やかな笑みを浮かべている。


「ありがとう」


タオルを渡すとそれを受け取って首もとの汗を拭う。

どちらかというと可愛らしい顔立ちの先輩だけど、こうしている姿は何だかちょっぴりワイルドに見えて男らしい。


「ねえ」


「はっ、はい!」


じっと見てしまっていたのがバレたのではないかと焦って返事をしてしまった。


「部活終わった後何か用事ある??」


だけど先輩はそれに気づいていないようで、そんなことを聞いてきた。


「いえ、何も……あっ、蛍達に呼ばれているので、少し蛍達のところに行くくらいです」


どうしてそんなことを聞くのかな??


「なるほど……それじゃあその後でいいから図書室に来てくれない??本の整理手伝ってほしいんだ」


「もちろんです」


「よかった。それじゃあまた放課後」


それだけ伝えると先輩は練習へと戻っていった。

本の整理でも、誕生日の放課後先輩と一緒にいられるのが何だか嬉しく思う。

なぜかはわからないけど。


「小早川ちゃんこれお願い!」


「はい!」


上がってしまいそうになる口角を手で隠しながら私も仕事に戻った。