そもそもlibertyがケンカした理由とは。


「あーー!!レイ勝手に苺食べた!!」


ワナワナと震える瀬那が指差して叫んだ相手は玲斗。


「あ??何だよ??苺が何??」


玲斗は気にした様子もなく苺のヘタを皿の上に置いた。


「ボクがショートケーキの上に乗ってる苺最後まで取っておくの知ってるだろ!?何で苺食べちゃうんだよ!!」


「うっせーな!とっとと食わねーのが悪いんだろ!?」


瀬那と玲斗は今はもうない苺について口喧嘩を始めた。

そう、ここまではいつも通りの口喧嘩。

本来ならここで終わるはずだった。


「2人とも苺くらいで煩いよ~。そんなのまた買えばいいだけじゃ~ん」


ふぅ、とあからさまに肩をすくめて見せた成海。

そんな成海に、2人の中の何かが切れた。


「くらいって何!?その程度にしか思ってないってこと!?」


「お前いつもそうやって次々新しいのに代えたがるよな!!」


その言いぐさにいつもはヘラヘラしている成海も何かが切れた。


「それどういう意味!?だいたいそんなこと2人に言われる筋合いないんだけど!!」


気付けばケンカは3人に。


「3人とも落ち着いてよ。どんどんケンカが悪化してきてるよ??ほら、とりあえず座って」


そろそろマズいと思い始め止めに入ったのは涼桔。

苦笑いをしながら3人を落ち着かせようとしている。


「りょーすけには関係ねーだろ!?」


「これはボク達の問題だから!!」


「そもそもいつもケンカ止めに入るけどお節介だから!!」


しかし頭に血が上ってしまっている3人にそれは逆効果だった。

余計にケンカをヒートアップさせてしまった。

しかも。


「ケンカしてるくせに偉そうに言わないでよ!!」


止めに入ったはずの涼桔も加わってしまい、ケンカは4人になった。


「ホント子供……くだらない」


真顔で呟きケンカを止めようともしない奏。

目の前で繰り広げられるケンカにもめんどくさそうに言い放った。


「またそうやっていつもめんどくさそうにするよね奏ちゃん!!」


「カナデはぼく達に対しても興味なさすぎだよね!!」


「ボク達のケンカ見ても明らかに目逸らすしね!!」


「お前もっと協調性持てよ!!」


いつもなら流される奏の毒舌も、今の4人にとっては苛立ちのポイントになってしまうらしく、4人は一気にまくし立てるように対抗した。


「言いたい放題言ってくれるね!!だいたいケンカなんて子供っぽいことしてるからでしょ!!」


そして普段ならテキトーに流すはずなのに、奏も癪に触ったらしく、珍しくケンカに加わってしまった。


そうして5人の言い争いは捻れに捻れ、収拾がつかない状態にまでなった。

そこまでいくと5人も元は何が原因だったのか忘れている。

だから酷い後悔に苛まれることになったのだ。


高校生のケンカなどそんな程度。

小さなことがいつの間にか大きなことになってしまう。

だけどそうしてぶつかることで、もう一度“仲間”というものをちゃんと理解するんだ。

特に、libertyのように個性豊かなメンバーならば、それが必要になる。

それが今回だったということ。


「ごめん!!」


部室前に響いた5つの重なった声。

冬が近付きつつある高2の11月の出来事。