何でこんな風になったのかわからない。


「あーあ、ボクもう美術室行くから」


大きな音を立ててドアを閉めたのは10分前。

ボクが美術室で1人落ち込んでいる理由は、


「何でケンカなんかしたんだろ……」


そう、libertyのメンバーとケンカしたから。

何でケンカになったのか、それは覚えていない。
気付いたら5人で言い合いになっていて、イライラしてそのままここへ来た。


「あれ??後藤先輩」


「トナミちゃん……」


落ち込んでいるボクは美術室のドアが開いたことにも気付いていなかったらしく、トナミちゃんが入ってきたことに、声をかけられるまで気付いていなかった。


「先輩何だか顔色悪いです。まるでインディゴブルーです」


「なんかそれかっこいいな。でもそんなに顔色青くないよね」


「冗談です」


近寄ってボクの顔を見上げたトナミちゃんは藍色を英語で言った。

かっこいいけど本当にその色ならボクヤバいよね。

それ多分死ぬ感じだよね。


案の定トナミちゃんは冗談だと言う。

まあ、そりゃそうだろうけど。


「でも顔色が悪いのは本当ですよ」


「………」


「何かありました??」


華奢な体でボクの背中をグイグイ押して無理矢理椅子に座らせたトナミちゃん。

ボクがされるがまま椅子に座ったのを見て、近くの椅子をボクの正面に引き寄せて、そこにトナミちゃんも座った。


「まるで相談窓口だ」


「まるで、じゃなくて、相談窓口なんです」


心配かけたくなくて冗談ぽく笑ってみたけど、トナミちゃんは少し困ったように笑うだけで口調はいたって真面目。

ボクはそんなトナミちゃんに観念してことの経歴を話した。


「仲直りしたほうがいいです」


「わかってるんだけどさ……」


トナミちゃんの言葉はどう考えても正論。

ボクだってそうしたいと思ってる。

だけどどうしたらいいのかわからない。

こんなにも大きなケンカをしたのは初めてだから。


「ごめんなさいですよ」


「えっ??」


「ちゃんとごめんなさいって言ったらいいんです」


「でも……そんなので許してくれるかな……」


「許してくれなかったらその程度の友情だったって話です」


冷たいようで的を得た、正しい言葉。


「……そうだね」


ボクは立ち上がって走り出した。

行かなければいけないところに。

libertyの部室に。


「みんな!!」


それぞれどこかに行っていたはずなのに、バッタリ部室前で4人と遭遇。

ボクはそのまま勢いに任せて言わなければいけない言葉を発した。








「トナミちゃん!!」


「はーい!」


「ありがとう!」


「はい!」


戻ってきたボクは嬉しくてつい大きな声を出してしまった。

けれどトナミちゃんは驚くことなく、ボクと同じくらい嬉しそうに笑ってくれた。


「後藤先輩!やりましたね!」


そしてニッと笑ってピースをくれた。