「後藤先輩??……」


眉間にシワを寄せ、ジッとワタシを見つめている。


「(多分他の子はこんな後藤先輩の表情を見ると“怖い”って言うんだろうなぁ……)」


多分今ワタシが考えていることは余計なこと。

でもこんな表情見たら思わずにはいられない。


「先輩、どうして悲しそうなんですか??」


他の子なら怒っているのかと思うんだと思う。

だけどワタシにはわかる。

とても悲しそうというわけじゃないけど、どことなくがっかりしたというような悲しみを含んだ表情。

とってもわかりづらい表現になっちゃったけど、それ以外では説明できないような感じ。


「だって、今日のトナミちゃん何だかおかしいよ」


「おかしい??」


「ボクの言葉は聞かずに、何か目的を果たそうと必死」


「……」


確かによくよく考えれば、突然笑ってくださいを連呼するなんておかしいよね。

後藤先輩の言う通り……。


「ミッションGなんです」


「はい??」


とりあえずわかってもらうことが大事。

そう考えたワタシは、臥龍先輩に言われたミッションを後藤先輩へ説明した。


「珍しくお咎めなしだと思ってたら、まさかトナミちゃん達を使ってくるとは……恐るべし臥龍先輩……いや、大将軍」


説明を終えると、後藤先輩は何かを小さな声でブツブツと呟いている。


「というわけで、ワタシはミッション遂行のために先輩を狩ります!」


「笑顔で“狩ります!”って怖すぎ!!」


いつの間にかチェーンソーは後藤先輩の手から離されていた。

自由になったチェーンソーを大きく振り上げて見せると、後藤先輩はそう叫んだ。


「いきまーす!」


「えっ!?ちょっ!!」


「えいっ」


焦る先輩にチェーンソーを振りかざした場所は、破れた服の間から見える腹筋。


「ふっ……くっくっ……ちょっやめっ……こそっ……こそばいって!」


偽物のため動かないチェーンソーを、のこぎりのように押したり引いたりしてみる。

すると、どうやらそれがこそばいようで、先輩は身をよじらせて避けようとしている。


「えいっえいっ」


「あははっ!もうやめっ……」


何だかワタシも楽しくなって、逃げようとしている先輩を逃がすまいと、何度もチェーンソーでこそばした。




臥龍先輩、調査報告です。

怖いゾンビを狩って怖がられないよう生き返らせようとしても、そもそもワタシが怖いと感じたことがないのでわかりませんでした。

このゾンビさんを怖いと思ったことがないので、結局笑わせてみようとしたことも無意味だったと思っているワタシからすれば、わざわざ狩って怖がられないようにしなくても、そのままのゾンビさんが一番だと思いました。