「じゃあ紬の姉ちゃんになる??」


「あはは、なれるならなりたいですね」


「なれるよ」


「えっ??」


冗談を言い合っていたはずなのに、岡本先輩は優しく笑いかけている。

どういうこと??

ちょっと待って。

先輩は何を言っているの??


「それってどういう……」


「なーんてな!」


言葉の意味を知りたくて、尋ねようとした瞬間、あたしの言葉を遮るように岡本先輩は自分の言葉を笑い飛ばした。


「さすがに伊吹とはいえ紬をよその家にやることはできねーな」


「えっ、あっ、そうですよね」


ケラケラ笑いながら言われた先輩の言葉。
なるほど、さっきの言葉の意味はそういうのとだったのね。

そう思って一緒に笑う。

だけどどうしてかな??

どうして、こんなに寂しい気分になっているんだろう。


「伊吹??……」


どうして、こんなにモヤモヤした気分になっているんだろう。


「伊吹……」


1人でいろいろ考えてしまい、岡本先輩があたしの名前を呼んでいることに全く気付いていなかった。


「ごめん……俺、何か気に障ること言ったか??……」


「えっ」


いつもの元気いっぱいの声とは違って、沈んだような声であたしに話しかける岡本先輩。


「俺……突発的に発言すること多いから……知らず知らずのうちに傷付けたかも……」


表情も、いつもの明るい笑顔ではなく、眉をひそめて悲しそうに歪められている。


「違います違います!岡本先輩は何も悪くないんです!」


「でも、明らかに伊吹が黙り込んだの俺の言葉の後だろっ」


「本当に違うんです!ちょっと考え事してただけなんです!」


どれだけ言っても、岡本先輩は落ち込んだ様子。


「先輩……先輩が悲しそうにしているの、あたしも悲しいです」


そう言うと、俯いた顔を少し上へ向けてくれた。


「ほら先輩、お菓子です。ねっ??笑ってください」


先輩の腕をギュッと掴んで、いつもの先輩の笑顔に負けないくらいの笑顔を向け、ハロウィンのお菓子を目の前に差し出す。

少しでも笑顔になってもらいたい一心で。


「伊吹……」


ようやく笑ってくれた。

それに嬉しくなるのも束の間。

突然お菓子を持っていた手を掴まれた。


「じゃあ、伊吹からそれ、俺に食わして」


「っ!!?」


そこにいたのは、少しイジワルそうに笑う岡本先輩。




臥龍先輩、調査報告です。

男気満点のフランケンさんを女々しくすると、どうやら悲しませることと、その反動で積極性が高くなることに繋がるようです。

悲しませるのは嫌だし、反動で積極性が高くなったフランケンさんの言動に、あたしは顔が熱くなりすぎて耐えられそうにないので、やっぱりネジはそのままにしておくほうがいいと思いました。