「伊吹はこの中からだ」


手渡された箱の中にはたくさんのハロウィンの仮装。

突然ハロウィンなんてどうしたのかと思ったけど、こういう楽しいイベントとかあの人は好きそう……。


「岡本はあのフランケンシュタインの仮装だ」


「っ!!?」


頭に思い浮かべていた人の名前を突然言われて、叫んでしまいそうになったのを何とか堪えた。

臥龍先輩本当にタイミング良すぎです……。

ゆっくり深呼吸をし、心臓を落ち着かせ、さっき説明されたlibertyのみなさんのことを思い浮かべながら、どれがいいのかと、ぼんやりと仮装を眺める。


「これ可愛い」


オレンジのジャックオランタンの仮装を手にとって広げてみる。


「紬ちゃん似合いそう」


岡本先輩の幼い妹さんである紬ちゃんにとても似合いそう。
そして、それを着ている紬ちゃんに満面の笑みを浮かべる岡本先輩。
想像の世界だけど、とても微笑ましい光景だと思い、ついクスクスと笑ってしまった。


「伊吹、何を笑っている」


「あっいえ!」


気付くとすぐ近くに臥龍先輩がいて、あたしの顔を不思議そうに眺めていた。

見られていたことが恥ずかしくて、自分の長い髪で顔を隠すように俯いた。


「ミッションO、男気満点フランケンのネジを取って女々しくしよう作戦だ」


「えっ??」


ミッションOって、岡本先輩のこと……だよね??
さっき言っていたミッションってこういうことだったんだ。

真顔でミッション名を言った臥龍先輩に、あたしはただ笑顔を向けることしかできなかった。







そして今に至り、1年4組の教室でいる。


「伊吹のそれ紬に似合いそうだよな」


あたしの着ているジャックオランタンの仮装を見てそう言った岡本先輩。


「あたしもそう思ってました」


選ぶときにあたしも同じことを考えていた。

何となく、先輩と同じことを考えたことが嬉しくて、笑顔になる。


「紬と並ぶと姉妹みたいに見えていいかもな!」


「姉妹ですか??紬ちゃんのお姉ちゃんになれるなんて素敵ですね」


ニカッと笑った先輩につられて私も同じように笑う。

可愛い紬ちゃんのお姉ちゃんになることを少し想像してみたら、余計に楽しい気持ちになってきた。