「お願いします。紬ちゃんを返してください」
「伊吹??……」
隣から聞こえた声に驚いて目を向けると、俺と同じように頭を下げる伊吹の姿。
「本当は、アナタ達だってこんなことが正しい選択だなんて思っていないはず」
「アナタなんかに何がわかるの!?黙りなさいっ!!」
「本当は、アナタ達だって先輩へ紬ちゃんを返してあげたいはず」
「黙れと言っているだろう!!」
「本当は、アナタ達だって」
「うるさいわよっ!!」
パシンッ。
頬を叩く音が響いた。
「いぶ……き……伊吹っ」
赤くなった伊吹の左の頬。
俺のせいでこんなっ……。
「どうして泣くんですか??」
その伊吹の優しい声の先には、涙を流す祖父母の姿。
「っ……わかっていたわよっ……そんなことっ……だけどこうするしかないじゃないっ」
そう言って泣き崩れた祖母。
その肩を抱いて、祖父がポツリポツリと話し始めた。
「柚紀が亡くなった時……赤ん坊の紬の姿を見て、柚紀の守った最後のものだと思った……だけど葬式の時……斎綺君と玲斗と太陽を見て、柚紀の守ったものはここにもあったのだと思った……」
そんなこと思っていたなんて知らなかった。
「柚紀が守りたかったもの……だけどもう守れないもの……それを娘に代わって守りたかった……」
どういうことだ??……。
話の真意がわからない……。
だって、それってつまり……。
「守りたかったんだ……お前達のことも……」
「どういう意味ですか??……」
震える声。
だけど知らなければならない真実。
俺は必死で言葉を紡いだ。
「……柚紀の死によってボロボロの状態のお前達に、赤ん坊である紬のことまで任せて、お前達が崩れてしまうのが怖かった……どんなことをしてでも……傍に居させるのはお前達にも紬にも良くないと思ったんだ……」
そんなの……知らなかった……。
「正しい選択でないことくらいわかってた!!……だけど冷たく突き放してしまわないと崩れてしまいそうで怖かった!!……もうすぐ玲斗は3年生になり受験が近付く、太陽ももうすぐ中学生だ……幼い紬や死んだ柚紀のことよりも、自分のことを1番に思ってほしかった……だからもう二度と会うことのないように……」
そう言って口を閉ざした。
「それじゃあ……全部……俺達のために??……」
「自己満足なんて最初からわかっていたわ……だけどあの頃は何も考えられず、ただ思った通りに動いてしまった……そうしたら、もう後に引けなくなってしまって……」
少し落ち着きを取り戻した祖母が、今度はゆっくりとそう言った。
「全部……俺達のため……」
「ごめんなさいっ」
「すまなかった……」
涙を流しながら俺へ頭を下げる2人。
「レイ、意味もなく連れて行ったんじゃなかったんだよ」
未だに地べたにしゃがんでいる俺を引っ張り上げて立たせた瀬那。
「全部ちゃんと、意味があったんだね」
俺と同じように地べたにしゃがんでいた伊吹の手を引っ張り上げて立たせたカナ。
「みんなちょっとだけ不器用だったんだね」
「不器用だったから、何も言えなかったんだね」
泣き崩れた祖父母をゆっくりと立たせるりょーすけとナル。
「レイ、もう一度、ちゃんと願ってみたら??」
そう言った瀬那は俺の背中をポンと叩いた。
それに続くように、カナ、りょーすけ、ナルの3人も背中をポンと叩いていった。
「岡本先輩、大丈夫です」
そして、隣には優しく微笑む伊吹。
「お願いします……紬の傍にいたい……紬をちゃんと……守りたい……柚紀さんの守ったものを……俺が守りたいっ!!」
深く腰を曲げて頭を下げる。
俺の想いがどうか届きますように……。
「こんなにも強かったのね……」
そう言って、俺の手を紬の手と繋がせた。
「紬……」
「れーくん!!」
「つむっ……ぎっ……」
「れえぇぇくーーん!!!!」
流れる涙と声。
確かにここに紬がいる。
ちゃんと俺の腕の中にいる。
「紬っ紬っ紬!!」
幼い俺の妹。
大切な俺の家族。
やっと……。
やっと約束守れる……。
やっと……。
「ありがとうっ……みんなありがとう……」
優しく微笑み俺達を見つめるliberty。
静かに涙を流して微笑む伊吹。
全部みんなのおかげ。
どんな時にも俺を救ってくれる大切な仲間。
みんながいなければ、俺はこれから先も何も変わりはしなかっただろう。
俺のことを救ってくれてありがとう。
本当にありがとう。
肌寒い秋の風が、今の俺にはとてもとても心地良い。
そう思えるのだって、みんなが居てくれたから。
だからこそ、俺はやっとこの言葉を口に出すことができる。
「紬……」
ずっと言いたかったこの言葉を……。
「おかえり」
「伊吹??……」
隣から聞こえた声に驚いて目を向けると、俺と同じように頭を下げる伊吹の姿。
「本当は、アナタ達だってこんなことが正しい選択だなんて思っていないはず」
「アナタなんかに何がわかるの!?黙りなさいっ!!」
「本当は、アナタ達だって先輩へ紬ちゃんを返してあげたいはず」
「黙れと言っているだろう!!」
「本当は、アナタ達だって」
「うるさいわよっ!!」
パシンッ。
頬を叩く音が響いた。
「いぶ……き……伊吹っ」
赤くなった伊吹の左の頬。
俺のせいでこんなっ……。
「どうして泣くんですか??」
その伊吹の優しい声の先には、涙を流す祖父母の姿。
「っ……わかっていたわよっ……そんなことっ……だけどこうするしかないじゃないっ」
そう言って泣き崩れた祖母。
その肩を抱いて、祖父がポツリポツリと話し始めた。
「柚紀が亡くなった時……赤ん坊の紬の姿を見て、柚紀の守った最後のものだと思った……だけど葬式の時……斎綺君と玲斗と太陽を見て、柚紀の守ったものはここにもあったのだと思った……」
そんなこと思っていたなんて知らなかった。
「柚紀が守りたかったもの……だけどもう守れないもの……それを娘に代わって守りたかった……」
どういうことだ??……。
話の真意がわからない……。
だって、それってつまり……。
「守りたかったんだ……お前達のことも……」
「どういう意味ですか??……」
震える声。
だけど知らなければならない真実。
俺は必死で言葉を紡いだ。
「……柚紀の死によってボロボロの状態のお前達に、赤ん坊である紬のことまで任せて、お前達が崩れてしまうのが怖かった……どんなことをしてでも……傍に居させるのはお前達にも紬にも良くないと思ったんだ……」
そんなの……知らなかった……。
「正しい選択でないことくらいわかってた!!……だけど冷たく突き放してしまわないと崩れてしまいそうで怖かった!!……もうすぐ玲斗は3年生になり受験が近付く、太陽ももうすぐ中学生だ……幼い紬や死んだ柚紀のことよりも、自分のことを1番に思ってほしかった……だからもう二度と会うことのないように……」
そう言って口を閉ざした。
「それじゃあ……全部……俺達のために??……」
「自己満足なんて最初からわかっていたわ……だけどあの頃は何も考えられず、ただ思った通りに動いてしまった……そうしたら、もう後に引けなくなってしまって……」
少し落ち着きを取り戻した祖母が、今度はゆっくりとそう言った。
「全部……俺達のため……」
「ごめんなさいっ」
「すまなかった……」
涙を流しながら俺へ頭を下げる2人。
「レイ、意味もなく連れて行ったんじゃなかったんだよ」
未だに地べたにしゃがんでいる俺を引っ張り上げて立たせた瀬那。
「全部ちゃんと、意味があったんだね」
俺と同じように地べたにしゃがんでいた伊吹の手を引っ張り上げて立たせたカナ。
「みんなちょっとだけ不器用だったんだね」
「不器用だったから、何も言えなかったんだね」
泣き崩れた祖父母をゆっくりと立たせるりょーすけとナル。
「レイ、もう一度、ちゃんと願ってみたら??」
そう言った瀬那は俺の背中をポンと叩いた。
それに続くように、カナ、りょーすけ、ナルの3人も背中をポンと叩いていった。
「岡本先輩、大丈夫です」
そして、隣には優しく微笑む伊吹。
「お願いします……紬の傍にいたい……紬をちゃんと……守りたい……柚紀さんの守ったものを……俺が守りたいっ!!」
深く腰を曲げて頭を下げる。
俺の想いがどうか届きますように……。
「こんなにも強かったのね……」
そう言って、俺の手を紬の手と繋がせた。
「紬……」
「れーくん!!」
「つむっ……ぎっ……」
「れえぇぇくーーん!!!!」
流れる涙と声。
確かにここに紬がいる。
ちゃんと俺の腕の中にいる。
「紬っ紬っ紬!!」
幼い俺の妹。
大切な俺の家族。
やっと……。
やっと約束守れる……。
やっと……。
「ありがとうっ……みんなありがとう……」
優しく微笑み俺達を見つめるliberty。
静かに涙を流して微笑む伊吹。
全部みんなのおかげ。
どんな時にも俺を救ってくれる大切な仲間。
みんながいなければ、俺はこれから先も何も変わりはしなかっただろう。
俺のことを救ってくれてありがとう。
本当にありがとう。
肌寒い秋の風が、今の俺にはとてもとても心地良い。
そう思えるのだって、みんなが居てくれたから。
だからこそ、俺はやっとこの言葉を口に出すことができる。
「紬……」
ずっと言いたかったこの言葉を……。
「おかえり」