私、神崎瑠美(かんざき るみ)は昔からお菓子を作ることが好きだった。
お母さんに簡単なお菓子を教えてもらううち、気付いたら自分でいろんなレシピを使って作るようになり、今では結構たくさんレパートリーが増え、いろんなものを作れるようになった。
だけど、作っても食べてくれる人がいなければ、作る理由がなくなる。
それでも、私はお菓子を作るのが好きだから、食べてくれる人がいなくても作っていたいから調理部に入った。

ずっと、入学する前から、調理部に入ることは決めていた。


「明日のスウィーツパーティーどうする??」


「何作ろっか??」


霧南の調理部には3ヶ月に一度スウィーツパーティーがある。
それは、調理部以外の人も自由に参加でき、調理部が作ったお菓子を食べるというもの。
先輩達はそんな話をしながら作業をしていた。





そして翌日。
今日はいよいよスウィーツパーティーの日。
今は部員全員が材料が届くのを待っていた。


「遅くない??」


「だよね……もうそろそろ作り始めなきゃいけない時間なのに……」


材料が届く時間から既に20分も経過していた。
だけど、材料が届く気配は全くない。
部員が焦り始めたその時、勢いよくドアが開き、部長が飛び込んで来た。


「ヤバいっ!発注ミスで材料が届くのが明日になってる!!」


つまり、今日は確実に届かないということになる。
部長の言葉にさっきの倍以上に焦りだす部員達。


「どうしよう!!このままパーティーを中断するなんてっ!」


「だけど、ケーキを作る材料がないんじゃ……」


口々に騒ぎ出し、一気に騒がしくなった調理室。


「……部長、あの」


部長へ近付いて行き声をかけると、部長は今にも泣き出しそうな顔で私を見た。


「今ある材料を全て持ってきてもらってもいいですか??あと出来れば、食堂でいらないものとかがあれば貰ってきていただきたいんです」


不思議そうにしながら、「わかった」と言って何人かの部員に声をかけ材料の運搬を指示した。


そして、目の前の机の上に置かれた材料達は、ホットケーキミックス、砂糖、薄力粉、マーガリン、ヨーグルト、クリーム、抹茶粉、ココアパウダー、卵2つ、ゼラチン、ヨーグルト、アプリコットジャムだった。

それを見て、私は深呼吸を1つし、全員に聞こえるよう大きな声を出した。


「砂糖と薄力粉とマーガリンではクッキーが作れます!ホットケーキミックスと卵とクリームと水でミルフィーユ!ゼラチンとヨーグルトとアプリコットジャムと砂糖と水でレアチーズケーキが出来ます!」