「霧南さんはとても生徒のことを考えいるんですね」


ニッコリ笑って感心したようにそう言った甲陽。


「いえいえ~それほどでもないですよ~」


だって俺達は他の生徒のことなんてどうでもよくて、ただ俺達のヒマつぶしネタを作りたいだけだから。

まあそんなことは言わないけどね。


「ちなみに、もし本格的に採用された場合、ハロウィンでは何を行いますか??」


「そうだな~やっぱり仮想をメインとした生徒同士の交流とか~、海外文化に触れ合うことを目的としたことかな~」


何て、それっぽいことをテキトーに話していると、隣に座っていた玲斗が机の下で俺の手をポンポンと叩いた。

どうかしたのかと顔を向けると、机の下で他校からは見えないように、ケータイの画面に映っている時計を見せてきた。

どうやらそろそろ潮時らしい。

いい加減ネタバラししないと、本物の霧南生徒会の1年生が探し当てに来るかもしれないからね~。


そう思った俺達は、そろそろ種明かしをしようと目配せをし、一斉に椅子から立ち上がった。

目の前の3校の生徒会のみんなは、何事かと目を見開いている。


「実は俺達ね」


ニヤニヤ笑いそうになる顔を引き締め、最後のネタバラしをしようとしたその時。


「何をしているんだ??……」


そろそろ来るだろうと思っていた1年生の生徒会のやつ。
だけど、どうやらそれよりもヤバい人が来たらしい。


「お前達は、何をしているんだ??」


その低く響いた声にギギギッと音が鳴りそうになる首を何とか回すと、案の定そこにいたのは生徒会長の臥龍先輩。

しかも他校の会長達も引き連れている。

今のこの状況を簡単に言葉に表すとするならば、“死亡フラグ”。


「失礼しましたー」


「すんませんっした」


いち早く状況を判断したのは奏ちゃんと玲斗。
2人は平然とした口調で素早く会長達の間をくぐり抜けて部屋を後にした。


「臥龍先輩ごめんなさい!」


「えっ!?あのっ申し訳ありませんでした!」


そして続くように動き出したのはセツ子とりょう。
セツ子は謝ると同時にりょうの手を引き素早く退出。
りょうは突然引っ張られて、焦りながらも謝罪をして共に退出していった。


つまりあれだね、俺ピンチ。


「成海様っ!!?なぜここへっ!!?」


「お前達はlibertyなはずだ、なぜここにいる」


「テメェ達俺達を球技大会で負かしてくれたヤツ達だろ??そんで女子にキャーキャー言われてたヤツ達だろ??あ??ケンカ売ってんのか共学さんよぉ」


俺へ飛び付いて来そうなくらいの勢いで突進してきたドリ女の白鳥蝶子。
臥龍先輩と同じことを淡々と語り俺のHPを確実に減らしにかかる甲陽の山田八雲。
そしてなぜかイチャモンを付けてき始めた玖珂の舞子圭太。


「こういう時は……逃げるが勝ち~!!」


過去最速の走りで俺は会長達の間をすり抜ける。


「お待ちになって!!成海様ーー!!」


「待てゴラァ!!」


そんな俺を追いかけ回す白鳥蝶子と舞子圭太。


「俺のこと見捨てるなんてみんな酷いよ!!」


先にどこかへ消えてしまったlibertyの4人へそう叫びながら、俺は廊下を全力疾走で駆け抜けた。


「ハロウィン……」


「どうかしたのか??臥龍」


「いや……liberty……なかなか面白い企画を出してくれたな」


逃げ出した教室で、臥龍先輩と山田八雲がそんな話をしているなんて知らずに。


「ドッキリ接待なんて二度とするかー!!」


俺は1人そう叫んでいた。