「リョー」


「カナデ??」


放課後、校門の所で立っていると、帰る気配はないカナデがやってきた。


「昨日の2人、先に突っかかってきた方が榛名維澄。後から来た方が間宮翔大。小学生の時に瀬那と知り合って、お互いライバルとして切磋琢磨してたらしいよ」


「えっ??」


「今は甲陽でサッカー部だって。それじゃあね」


突然早口で言葉を連ねたと思ったら、手を振って校舎の方へ歩いて行くカナデ。


「ちょっと待って、どうしたのいきなり」


事態が呑み込めず、焦るぼくのことは無視して、カナデはそのまま歩いて行ってしまった。


「カナデ……もしかして……」


ふと1つの仮想が生まれた。
そしてたぶんそれは当たっている。


「あれ~??りょうどうしたの~??」


カナデが去って少ししてからぼくが待っていた人がやってきた。


「ナル、待ってたよ。それにしても、すごい服だね、目立ちすぎだよ」


ぼくがここで待っていたのはナル。
ナルは特効服を身にまとい、ぼくがいることに対して驚いた表情をしている。


「甲陽でサッカー部に所属している榛名維澄君と間宮翔大君だって」


「何々突然、どうしたの~??」


「行くんでしょ??甲陽」


ナルはバレたか、という風に苦笑いを浮かべた。

笑って誤魔化しても無駄だよ。
ナルがどうするかなんてすぐわかる。
そして、カナデも、ぼく達がどうするかなんてわかってたんだよ。


「ナルが暴走しないか心配だから付いて行くよ」


「アハハ、それじゃあその時は止めてもらおうかな~」


目立つ特効服の裾を風になびかせるナルの隣へ並び、ぼく達は甲陽学園への道を進んだ。







「すみませ~ん、榛名維澄君と間宮翔大君いますか~??」


甲陽へ着いた俺達は、周りからの不審そうな目を無視して、サッカー部の場所へと向かった。
そして、着いたと同時にアップをとるサッカー部に向かってそう叫ぶと、一斉に俺達へ目を向けられた。


「服でも十分目立ってるのに」


苦笑いをしながらりょうが俺にそう言っていると、昨日の2人が歩いて来るのが見えた。


「お前は昨日瀬那と一緒にいた……」


「僕達に何のよう??言っておくけど、謝れなんて言われても困るからね」


完全に闘志剥き出し。


「いや~ここのサッカー部のマネージャーが可愛いって聞いて~お茶でもって誘いに来ただけなんだよね~。俺ソッチの趣味ないから~」


俺の言葉によって剥き出しだった闘志は消え、間抜けな顔になった。


「ナル、何しに来たの??」


「え~??だって可愛い女の子は放っておけないじゃ~ん」


呆れ顔のりょうに熱弁していると、目の前の2人は意味不明という表情で戻ろうとしていた。


「あ、ねぇ!瀬那と君達との間の問題は知らないけど、瀬那のこと何も知らないのに、瀬那に自分のイメージ押しつけるのやめてほしいかな!瀬那だって1人の人間なんだから、完璧ってわけじゃないんだよね!だから、えっと、あれ?何が言いたいんだっけ?」


あれあれ??と戸惑うりょうに、益々何なんだ、と顔をしかめる2人。


「とりあえず、えらそーなこと言う前に、事情知ってから出直してこいやってことだね~」


ニッコリ笑ってそう言うと、2人は目を見開いて固まった。
俺はそれを確認した後、りょうと一緒に霧南へと戻った。


「やめてよね殴り込みなんて……不良じゃあるまいし」


帰ってくると、校舎の玄関で奏ちゃんが呆れ顔で待っていた。


「ナンパしに行ったのに失敗~」


たぶん俺達のしたことなんて、大して意味はないんだろう。
だって俺達の腹いせにしかなっていないから。

だけどねセツ子、俺達はわざわざこんなことをするくらい、悔しかったんだよ。

どんな理由でも、仲間を傷付けられることは許せなかったんだ……。







サッカーをしていた頃の夢を見て、その続きを思い出すことも……。
サッカーをしていた頃の思い出を、もう1度思い出すことも……。

今のボクには難しすぎる……。

だから、ボクは4人がどんな風に思って、それぞれに動いてくれていたかなんて、そんなこと、全然知らなかった。