「先輩は放課後先生に教えてもらうのに、美術部には入らないんですか??」


「えっあぁ、そうだな。絵は半分趣味のようなものだし……」


「先輩はいつからその髪の色なんですか??」


「えっと、中学終わり頃かな??……」


「先輩は……」


「ちょっとストップ!」


まだ質問を続けようとしたワタシへ先輩はストップをかけた。


「君さ、ボクが恐くないの??」


真剣にそう聞いた先輩は真っ直ぐワタシの目を見て言った。


「どうしてワタシが先輩のことを恐がるんですか??」


そう返したワタシに瞬きを2回して、「髪が金髪ロン毛だから、後輩達に恐がられるんだよ」と落ち込んだように呟いた。


「キラキラ先輩」


「キラキラ先輩??」


心の中で密かに呼んでいたように呼んでしまったので、先輩は訳が分からないという風な顔をしたが、ワタシは気にせず続けた。


「先輩の髪、綺麗です。太陽よりもずっとずっと眩しくて明るくて、キラキラしていて好きです」


そう伝えれば、キラキラな髪にも負けないくらいのキラキラの笑顔で「変わってるなぁ」なんて言った。


「ボクは2年4組の後藤瀬那」


「ワタシは1年4組の砺波杏奈です」


「よろしくな」


手を出した先輩に自分の手を重ねると、ギュッと握って握手をしてくれた。


それからまた20分くらい経ち、ワタシ達も帰路へ帰って行くことになった。


帰り道、別れる時に先輩は「恐がらないでくれてありがとう!」と言って手を振って帰って行った。
それを聞いて、まだその話をする先輩がおかしくて、笑いを耐えながら、ワタシもお辞儀と挨拶をして自分の帰路を帰った。

振り向くと先輩の髪が夕日に照らされて、金色ではなくオレンジ色にキラキラ光っていた。


「キラキラ先輩なんて言ってごめんなさい、後藤先輩」


キラキラの先輩の後ろ姿を見ながら呟いたワタシの言葉は風の音と共にどこかに消えていった。































「瀬那、昨日の女の子見つかった??」


翌日学校へ行くと、昨日ボクが砺波さんに恐がられなくて驚いたことを知っているカナデが、その話を振ってきた。


「セツ子のくせに女の子とかっ」


睨むようにボクを見てきたナルさんにとりあえず謝罪をして昨日のことをみんなに教えた。


「瀬那のこと恐がらない後輩がいるなんてな」


「レイ笑いすぎ。だけど、確かに言えてるかもね」


爆笑するレイを宥めてるけど、結局ボクの顔を見て笑ったリョウキチ。

結果的にみんな爆笑しだしてサイテーだ。


それにしても、ボクを恐がらずに笑ってくれる子がいたなんて……。


「走って逃げたりしてごめんね」


あの時、驚きのあまり逃げ出したボク。
トナミちゃんの気の抜けたような笑い方を思い出しながら、4人には聞こえないくらいの呟きで笑った。