「話戻すけど、りょうは離れてほしくない人とは距離を取る。俺達はそれが嫌だと思ったから、他の組のヤクザ相手でも慣れないケンカしたんだよ」


まあ、玲斗の言うとおりボロボロになったけどね~。


真面目に話した後に、いつものヘラヘラした笑みでそう付け足したナル。


「あの時走れば逃げられた。だけどボク達はリョウキチと離れる気がないから逃げなかった」


「勝つとか負けるとかじゃなく、俺達はお前にヤクザ相手でも逃げたりしねーからって伝えたかったんだ」


「それを証明すれば、リョーは安心して俺達の前で笑ってくれると思ったんだよ。予想通りそうなったでしょ??」


ナルに続いて言われたセナとレイとカナデの言葉にぼくは息をのんだまま固まった。


あの時……原田組がぼくの家から帰って行く4人を襲った日。

ぼくが4人の言葉に救われた日。

だけどぼくは、本当は、伝えられた言葉だけじゃなく、伝えられなかったみんなの思いにも知らず知らずのうちに救われていたんだ。


「詩音ちゃんはリョーのことを傷付けないかが不安で自分から聞いたりできないんだよ。それはもちろん、リョーが1番よくわかってると思うけどね」


カナデの言うとおり、小早川さんは絶対に踏み込んでこない。


「自分から壊すような真似すんのはスゲー怖いと思う。だからりょーすけは気付かねーふりしてたんじゃねーの??」


そうだ……。
レイの言うとおり、ぼくはわかっていたから、小早川さんのあの表情の意味を汲み取ろうとはしなかった。


「一か八かだもんな……。けど、このままにしておいても、結局今出来ている溝が広がって離れて行ってしまうのがオチになる」


セナの言っていることはよくわかる。
そのこともぼくは恐れているから。


「りょうが不安なのはよくわかるよ、だけどね、女の子相手には自分から動くべきじゃないかな??」


ナルの優しい口調にハッとして顔を上げる。
すると、4人はぼくへ優しく微笑みかけている。


「バカじゃないから、ここまで言えばわかると思うけど……」


ナルがその後に続けたい言葉。
それは………。


「ぼくは……小早川さんが離れて行ってしまうのが嫌だ……」


震えそうになる声に頷いてくれるみんな。


「せっかく仲良くなれたのに……離れてほしく……ない」


ぼくの本心を伝えると、わかっていたというように4人は笑顔をくれる。

ぼくは、その笑顔を見て、無性に小早川さんのことが頭を巡った。