「トナミちゃんすごいな……」


驚いて1人で立ち尽くしていると、さっき先輩が出て行ったばかりの扉が開いた。


「あっ後藤先輩」


それはさっき臥龍先輩との話題に上がったばかりのトナミちゃん。

トナミちゃんはボクの姿を見つけると、笑顔でパタパタとスリッパを鳴らしながら近付いてきた。


「トナミちゃん聞いたよ、全国大会進出だって??すごいね」


驚いたような顔をしたため、臥龍先輩から聞いたのだと伝えると、今度こそ嬉しそうに笑ってお礼を言ってくれた。


「あと、臥龍先輩の結果も聞いたよ」


トナミちゃんはボクの言葉を聞いて、困ったような、少し寂しそうな笑顔を浮かべながら「そうですか」と静かに呟いた。


「トナミちゃん寂しい??……」


「寂しいですけど……まだ卒業したわけではないですし、臥龍先輩も清々しい様子でしたから」


だから大丈夫。

満面の笑みでそう言ったトナミちゃんの言葉は心の底から思っているという風で、トナミちゃんの見た目に似合わない強さを改めて知った。


「あっそうだ!」


突然何かを思い出したように、美術室でいつもトナミちゃんが絵を描いている場所から何かをゴソゴソと探し出した。


「どうしたのトナミちゃん」


「あった!」


何かを後ろに隠して笑顔でもう1度ボクのところへ近づいてくる。
ボクは訳が分からず首を傾げる。


「後藤先輩、ハッピーバースデーです!」


「えっ??」


後ろに隠していたものを両手でボクの方へ渡してきたトナミちゃんに驚くボク。

だってまさかトナミちゃんがボクの誕生日を知っているなんて思わなかったし、プレゼントをくれるなんて思ってもみなかったから。


「あれ??先輩??」


固まるボクの顔の前でトナミちゃんが手を振る。


「ありがとう、嬉しい」


プレゼントを受け取ると、トナミちゃんはいつものような笑顔を向けてくれた。




家に帰ってプレゼントを開けてみると、
リョウキチからはチョーカーとヘアアクセ。
レイからはスニーカー。
カナデからはキャップとアンクレット。
ナルさんからは細いベルト。

そしてトナミちゃんからは絵を描くための50色の色鉛筆。


みんなからもらったプレゼントはどれもこれもボクの好みに合っていて、どれもすごく嬉しかった。

普段ボクのことを弄ってくるくせに、libertyのみんなはこういうのをちゃんとしてくれる。
そんなみんなに笑顔が溢れる。


「瀬那ーー」


「今行くー」


下からボクを呼ぶ母さんの声が聞こえる。
返事をして階段を降りて夕食の置かれた机を見る。
今日もおいしそうなご飯。
しかも今日はボクの好きなものがある。


誕生日ってやっぱり嬉しいものだ。


いつもより笑顔が多い1日をくれたみんなにもう1度心の中でお礼を言った。