「あの人2年生だよね??……」


「この学校ってあんな人いたんだね……」


「絶対関わらないようにしようね……」


「うん……」


ワタシのクラスメートがそうコソコソ話しながら1人の先輩をチラチラ見ていた。
ワタシもそっちへ目を向けてみると。


「(キラキラだ……)」


キラキラ光る少し長めの金色の髪。
先輩が動く度、一緒に揺れてキラキラしている。
みんなは恐がっているようだけど、ワタシはその髪を綺麗だと思った。
素直に「いいな」とさえ思えた。









ワタシ、砺波杏奈(となみ あんな)は中学生の頃から入っている美術部に高校でも入ることにした。
絵を描くことは日常生活のうちの1つ。それくらいワタシにとっては大切なこと。

霧南の美術部は、中学の美術部と同じくらい心地よい場所で、やっぱり美術部っていいなぁと思える。
好きだから続けていられる絵は、ワタシのことを支えていてくれるものの1つ。
もっともっと上手くなりたい。そう思えるもの。


「砺波、水入れてきて~!」


「はーい!」


画材道具の整理をしている先輩に変わってワタシが水を入れてくることになり、返事をし、水道へ向かった。
廊下を30mくらい歩き、角を曲がればすぐの水道は、基本美術部しか使わない、美術部専用の水道みたいになっているらしい。

後は角を曲がればいいだけ。
そしてそのまま角を曲がろうとした瞬間。


「おわっ!」


「っ!!」


誰かにぶつかってしまった。
驚きのあまり声も出ないワタシはぶつかってしまった人から飛び退くように1歩退き、誰かを確認した。


「ごめん!大丈夫!?誰かが曲がってくるなんて思わなくてっ!本当にごめん!」


キラキラ。

金色のその髪は、間違いなくあの先輩だった。


「……」


そんなことを考えていると、黙っているワタシに心配してオロオロし出した先輩。


「どこか痛めた!?」


「いっいえ。どこも」


「じゃあ、もしかしてボクが恐い!?ボク別に恐くないよ!見た目こんなだけどっ……」


「ふはっ」


「!!?」


自分が恐がられていることを知っていて、ワタシが恐がっていると勘違いして、焦っている先輩が何だか可愛く思えて笑ってしまった。
それに対してすごくビックリした顔をした先輩。


「大丈夫です。ぶつかったのだってワタシも何も気にせずに曲がったのが悪いんです」


「おっおお……でもボクも悪いから……」