「後藤先輩、大丈夫ですか??」
ナルみんの提案でバラけたボク達。
みんな普段と違う雰囲気に戸惑っていたけど大丈夫かな??
何て、そんなこと言ってるボクもその一員なんだけどな。
「大丈夫大丈夫」
隣を歩いているのは、黒の短ランを着て、金髪ロングのウィッグを付けた、まるで小さいボクみたいな服装のトナミちゃん。
もちろん、トナミちゃんはボクみたいに目つき悪いとかじゃないから普通に似合ってて可愛らしい感じ。
それに比べて、タイトスカートのスーツ着た女教師のボク。
アウト感が否めない。
それにしても、トナミちゃんは何でこんなに普通に居られるのかな??
ボクなんてこの服装もう死にたいくらいなのに。
「後藤先生」
「トナミちゃん、それダメだよ」
生徒と教師とか、組み合わせ的にもなんか危ない。
女の子とか好きそうだよな、こういう設定。
「見てみて!」
「すごーい!教師と生徒!」
ほら言わんこっちゃない!!
カメラ構えて写真撮られ出したよ!!
しかも人めっちゃ集まってきたし!!
「トナミちゃん、早くここから離れようか」
「そうですね」
客通りの多い場所から離れるため、ボク達は早足で歩いていく。
どこに向かっているかなんて考えずに、ただ進んでいくボク達。
「??……トナミちゃんちょっと待って」
校舎内を早足で進んで行っているとき、ある場所を見つけたボクは、一緒に歩いていたトナミちゃんを引き止めた。
「どうかしました??」
「ここ見たい」
そこは、美術部の絵が飾られた場所。
キャンバスが多く並んでいるところ。
「すごい」
「ここにあるのはコンクールに出展するものなんですよ」
9月の末にあるコンクールに出展する作品達。
毎年、霧南祭を終えた数日後に絵は全て会場へ運び込まれていくらしい。
「あっ……臥龍先輩の……」
1番手前に置かれた、サッカー部をモデルにした臥龍先輩の絵。
完成した姿を初めて見た。
「すごいですよね……ワタシも先輩みたいに描けたらなぁ……」
それは羨ましがっているのではなく、純粋に尊敬が読み取れる。
「もっと……居てほしい……」
傷付けないように絵には触れない。
その変わり、キャンバスの縁をそっと右手の中指がつたう。
そんなトナミちゃんから発せられた言葉。
それは、尊敬している先輩が少しでも多くコンクールを勝ち進み、少しでも多く部へ残っていてほしいという願い。
「トナミちゃんの絵を見せて??」
文化祭という日に悲しそうにしているなんて、臥龍先輩に見つかったらボクが怒られそうだ。
きっと臥龍先輩はトナミちゃんが悲しそうにしていることなんて願ってない。
だからボクは、トナミちゃんへゆっくりとそう言った。
「ワタシのはあれです」
ハッとしたように顔を上げて指差したのは、臥龍先輩の絵と真向かいに置かれた絵。
もっと近くで見たくて、トナミちゃんの絵の間近まで歩いていった。
「!!……」
驚いた。
これがこの子の本気なのか。
そこにあったのは、柔らかな色使いながらも、迷いのない鋭い線で描かれた今までボクが見たこともないくらい綺麗な絵。
「初めて見た……トナミちゃんの絵……」
しゃがみこみ、金色の長い髪が体中に巻き付き、虚ろな目で何かを神に願うように両手を握った人。
綺麗だけど、胸が苦しくなるような何かを感じる絵。
「実はこれ、1作目にしようと思っているんです」
「1作目??」
「本当に描きたいのは2作目の方なんです」
「なら、そっちを描けばよかったのに」
そう言うと、トナミちゃんは微笑みながら首を横に振る。
「今は描いてはいけないんです」
「………」
「だから来年のコンクールにはこの2作目を描くつもりです」
ボクにはわからないトナミちゃんなりのこだわりが、この絵にはある。
悲しそうに何かを望んでいるこの人が来年にはどうなっているんだろうか??
それを知りたいけど、ボクは黙って頷く。
ナルみんの提案でバラけたボク達。
みんな普段と違う雰囲気に戸惑っていたけど大丈夫かな??
何て、そんなこと言ってるボクもその一員なんだけどな。
「大丈夫大丈夫」
隣を歩いているのは、黒の短ランを着て、金髪ロングのウィッグを付けた、まるで小さいボクみたいな服装のトナミちゃん。
もちろん、トナミちゃんはボクみたいに目つき悪いとかじゃないから普通に似合ってて可愛らしい感じ。
それに比べて、タイトスカートのスーツ着た女教師のボク。
アウト感が否めない。
それにしても、トナミちゃんは何でこんなに普通に居られるのかな??
ボクなんてこの服装もう死にたいくらいなのに。
「後藤先生」
「トナミちゃん、それダメだよ」
生徒と教師とか、組み合わせ的にもなんか危ない。
女の子とか好きそうだよな、こういう設定。
「見てみて!」
「すごーい!教師と生徒!」
ほら言わんこっちゃない!!
カメラ構えて写真撮られ出したよ!!
しかも人めっちゃ集まってきたし!!
「トナミちゃん、早くここから離れようか」
「そうですね」
客通りの多い場所から離れるため、ボク達は早足で歩いていく。
どこに向かっているかなんて考えずに、ただ進んでいくボク達。
「??……トナミちゃんちょっと待って」
校舎内を早足で進んで行っているとき、ある場所を見つけたボクは、一緒に歩いていたトナミちゃんを引き止めた。
「どうかしました??」
「ここ見たい」
そこは、美術部の絵が飾られた場所。
キャンバスが多く並んでいるところ。
「すごい」
「ここにあるのはコンクールに出展するものなんですよ」
9月の末にあるコンクールに出展する作品達。
毎年、霧南祭を終えた数日後に絵は全て会場へ運び込まれていくらしい。
「あっ……臥龍先輩の……」
1番手前に置かれた、サッカー部をモデルにした臥龍先輩の絵。
完成した姿を初めて見た。
「すごいですよね……ワタシも先輩みたいに描けたらなぁ……」
それは羨ましがっているのではなく、純粋に尊敬が読み取れる。
「もっと……居てほしい……」
傷付けないように絵には触れない。
その変わり、キャンバスの縁をそっと右手の中指がつたう。
そんなトナミちゃんから発せられた言葉。
それは、尊敬している先輩が少しでも多くコンクールを勝ち進み、少しでも多く部へ残っていてほしいという願い。
「トナミちゃんの絵を見せて??」
文化祭という日に悲しそうにしているなんて、臥龍先輩に見つかったらボクが怒られそうだ。
きっと臥龍先輩はトナミちゃんが悲しそうにしていることなんて願ってない。
だからボクは、トナミちゃんへゆっくりとそう言った。
「ワタシのはあれです」
ハッとしたように顔を上げて指差したのは、臥龍先輩の絵と真向かいに置かれた絵。
もっと近くで見たくて、トナミちゃんの絵の間近まで歩いていった。
「!!……」
驚いた。
これがこの子の本気なのか。
そこにあったのは、柔らかな色使いながらも、迷いのない鋭い線で描かれた今までボクが見たこともないくらい綺麗な絵。
「初めて見た……トナミちゃんの絵……」
しゃがみこみ、金色の長い髪が体中に巻き付き、虚ろな目で何かを神に願うように両手を握った人。
綺麗だけど、胸が苦しくなるような何かを感じる絵。
「実はこれ、1作目にしようと思っているんです」
「1作目??」
「本当に描きたいのは2作目の方なんです」
「なら、そっちを描けばよかったのに」
そう言うと、トナミちゃんは微笑みながら首を横に振る。
「今は描いてはいけないんです」
「………」
「だから来年のコンクールにはこの2作目を描くつもりです」
ボクにはわからないトナミちゃんなりのこだわりが、この絵にはある。
悲しそうに何かを望んでいるこの人が来年にはどうなっているんだろうか??
それを知りたいけど、ボクは黙って頷く。
