女装をさせられて接客をした俺達に、やっと休憩時間がやってきた。


「やっとこのメイドから解放されんのか」


「接客の時間がすごく長く感じたよね」


嬉しそうにキャッキャッとはしゃぐ玲斗とリョー。


「え~、俺はまだ着ておきたいな~」


「それナルさんだけだから」


残念そうなナルへ冷めたような視線を送る瀬那。


「なんか嫌な予感する」


どこへ行こうかと楽しそうに話す女装した俺の友達。
でも俺は、なぜか嫌な予感がしてならない。


「えっ??何言ってんの??服そのままに決まってるでしょ??」


残酷にもクラスの女子から告げられた言葉。
絶望感丸出しの玲斗とリョーと瀬那の3人とは打って変わり、ナルは喜んでいる。


「はぁーー……」


自分の勘の鋭さに俺はため息しかでない。
できることなら当たってほしくなかったよ、嫌な予感。







「どうせこうなるんだよボク達は……」


「何も知らずにいた昨日までの自分をぶん殴りてー……」


「クラスの為とはいえさすがにこれは……」


タイトなスーツを着た女教師。
黒と白のミニスカートのメイド。
ピンクと白のフワフワロリータ。
絵面がものすごく悪い。


「まあまあ~結構楽しいじゃん」


網タイツにミニスカートのナース。
あぁ、余計に絵面が悪い。


「加えて大正ロマン風袴の俺か……」


端から見るともっともっと絵面が悪いことだろう。
他人のことなら無視できるけど、俺も含まれてるとなれば話は別だ。
もう本当に帰りたい……。


そうこうしていると、いつの間にか瑠美ちゃん達のクラスである1年4組の教室へ到着した。


「伊吹達もカフェだったんだな」


看板を見た玲斗に続いて看板を見ると、確かにカフェと書かれていた。


「どうしてカフェなのにあんなに隠したがっていたのかなぁ??」


「ツンデレ意地っ張りな蛍ちゃんもあんなに必死で来ないで~って頼んできたからな~」


不思議そうに小首を傾げるリョー。
ナルもリョーのマネをするように小首を傾げた。


「とりあえず入ってみようよ」


俺の言葉を聞き、ナルを先頭にドアを開け中へ入る。


「教えてはないからセーフだよね??トナミちゃん」


俺の後ろにいる瀬那の意味深な発言はどうやら俺にしか聞こえていないらしい。


「!!」


驚いた。
ドアを開けたそこは、カフェはカフェでも、男装カフェだった。


「後藤先輩約束破りましたね!?」


「破ってない破ってない!教えてはないから」


走って近付いてきたのは短ランに金髪ロン毛のウィッグを付けた、まるで小さな瀬那のような杏奈ちゃん。


「荒川先輩っ」


「小早川さんかっこいいね」


驚いた表情でリョーと話しているのは、小さなシルクハットに貴族服風のゴスロリ服に、ショートの地毛の毛先を少しハネさせた服装の詩音ちゃん。


「来ないでくださいって言ったのに……」


「伊吹ドクトルモノクルかっけー!」


肩を落として玲斗と話しているのは、ドクトルモノクルと執事服に、ソフティムーヴのウィッグ身に付けた舞璃ちゃん。


「………」


「蛍ちゃん可愛い~!」


死んだ魚の目をしてナルと話しているのは、外科医のような服の上に白衣を着て、黒のレパドワックスのウィッグを身に付けた蛍ちゃん。


「長坂先輩まで来ちゃったんですね……」


「瑠美ちゃん似合うね」


そして俺の目の前にいるのは、学院帽と大正ロマン風のメンズの袴を身に付け、黒のナチュラルショートのウィッグを身に付けた瑠美ちゃん。


みんな普通の男よりかっこいいんじゃない??