〈ある大きなお城に、それはそれは可愛らしい1人の赤ちゃんが産まれました。

雪ほどは白くない肌と、まるで返り血を浴びたかのように真っ赤な唇。

長い金髪と割れた腹筋。

睨めば子供が大泣きしそうなつり目。

あー、今それ本当に可愛らしいのか??とツッコミを入れた奴、後で体育館裏集合。

オホン、とにかく可愛らしいという設定の赤ちゃんはセナ雪姫と名付けられました〉



「まあ何て綺麗なお花!って痛い!!何このバラ!!」



〈セナ雪姫がバラに刺されながらすくすくと……それはもう180cm超えになるくらいすくすくと育って行く中、お城では……〉



「鏡よ鏡、この世で1番美しいのは誰??」



〈あの……奏さん??……せめて鏡を見ながら言ってもらってもよろしいでしょうか??……ソファで寛がないでくれますか??〉



「俺に働けって言ってんの??とりあえず土下座してもっと乞いなよ」



〈すみません!!お願いします!!〉



「ちっ……鏡よ鏡、この世で1番美しいのは誰??」



〈お妃様が舌打ちしながらも鏡に向かってそう尋ねてくれました〉



「そんなんカナ君が1番美しいに決まっとるやろー??そんなに俺に誉めてもらいたいん??」



「すみません鏡の中に変な大和らしきものがいるので割ってもいいですか、いいですよね」



〈いいわけ無いじゃないですかっ!!大和君もヘラヘラしない!!〉



「あっわかった!やっと俺と友達になってくれる気になったんやなー!!」



〈大和鏡もうお前黙れっ!!

ええっと、そんなお腹の中真っ黒なお妃様の正体は恐ろしい、めちゃくちゃ恐ろしい魔女でした〉



「鏡よ鏡、この世で1番美しいのは誰??」



〈ある日いつものようにお妃様が鏡にそう尋ねました〉



「1番美しいん??そんなん女の子に決まって……えっ??せーちゃん??あぁ、そういう台本やったな………それはセナ雪姫です」



〈鏡が物語上の空気を読んでセナ雪姫と答えました〉



「俺あんな女装男に負けたの??うわー無いわー、しょうがないから狩人に殺させようかな」



「カナ君が殺らへんの??」



「だってめんどくさい」



〈そういうわけでお妃様は狩人にセナ雪姫を殺すよう命じました〉



「お妃様も人使い荒いよなー」



「えっと、あなたは??」



「俺狩人、セナ雪姫を殺すよう命じられたんだ、つーことで、はいっ殺します」



「ちょっ!!待て待て待てっ!!決断早いなっ!!人の命何だと思ってんの!!?」



〈森の奥にセナ雪姫を連れてきた狩人は何の迷いもなくライフルをセナ雪姫の頭に突き付けました。

あまりに早いその行動にセナ雪姫はタジタジ〉



「いやー、さすがに女装相手に俺も情移らないから、まあ人生諦めも大事だよ」



「その立てた親指へし折りてーーっ!!」



〈殺す気満々の岡本狩人。

もうお終いかと思ったその時、突然狩人の携帯が鳴った〉



「あ??もしもしお妃様??えっ??おぉ!!そりゃ楽しそう!!おんおん、んじゃなー………つーことで俺帰るわ」



「えっ??」



「グッバイ」



〈唖然とするセナ雪姫を無視して狩人は1人帰って行きました〉



「命助かったからまあいいか……それよりこれからどうしよう??」



〈森の奥に置いて行かれたセナ雪姫は帰り道がわからずトボトボとさまよっていました〉



「あっ家だ」



〈するとそこには山小屋が建っていました〉