「それじゃあ次は、先に体育祭の競技を決めたいと思います」


なっちゃんの声でまた騒がしくなる教室。
何の競技に出ようかと盛り上がっている。


「俺めっちゃ動くやつがいいな!お前達は??」


そう言った俺に4人はそれぞれ考える素振りを見せた。


「俺はやっぱり女の子から注目されるやつかな~」


「俺はケガしなくて楽そうなやつ」


出たよ、女タラシの最低ヤローと他力本願やる気ゼロヤロー。
つーか、ナルとカナ去年も同じこと言ってたな……。


「ぼくは残ったやつでいいや、何でも楽しそうだし」


「ボクはレイと同じくいっぱい動くやつ」


天使なりょーすけと筋肉バカの瀬那。
前の2人に比べてりょーすけは何ていいやつ。
瀬那はまあ、俺と一緒に体育祭盛り上げ役っつーことで良しとしよう。


そして個人種目競技は決まり、名前の下に競技を書かれた。

荒川……綱引き、ムカデ競争
岡本……騎馬戦、二人三脚
後藤……騎馬戦、二人三脚
長坂……障害物競争、大縄跳び
松岡……騎馬戦、玉入れ


「男子の1000mリレーはlibertyのみんなに走ってもらいたいって意見があるんだけど……」


なっちゃんの言う男子1000mリレーとは、クラスから5人の男子を選抜で出し、1人200mを走りリレーをするもの。

もちろんいいよ!
そう答えてあげたいけど……。


「………」


カナへ目を向けると黙って黒板を見つめている。
瀬那もカナを黙って見つめ、りょーすけは心配そうに眉をひそめ、ナルは苦笑い。
5人誰もが黙ったまま。
おかげで教室は静まり返り、聞こえるのはコソコソとどうしたのかと心配する声。


「いいんじゃない??」


そんな中先陣を切るように声を発したのはカナ。
その言葉に俺達は少し焦った。
だって短距離走だろ??……


「俺は出ないけどね、4人は出ればいいよ……俺はケガする競技パスだから」


後半の言葉に「どんだけめんどくさがり」と笑い出すクラスメート達。
複雑なのは俺達4人だけ……。


結局カナの代わりに大和幹哉の文字。
カナなりに俺達に気を遣ったんだろう……。
それが嬉しくもあり、少し悲しくある。



「それじゃあ次は学年別競技の方になります。昨年同様に応援合戦とフォークダンスと借り物競争をします」


霧南の体育祭はフォークダンスと借り物競争を3学年強制参加型で毎年行われ、クラスから選抜もなく、1人1人が強制参加。


「それじゃあ応援合戦について何か意見がある人いますか??」


応援合戦は霧南の体育祭で最も盛り上がる競技の1つ。
それぞれのクラスが持ち時間5分程度でパフォーマンスを行うもので、リレーに次いで点数の高い競技だ。
これは強制参加型ではなく、それぞれのクラスで人数を決め、選抜をして競技者を決める自由型。


「応援合戦っていえば法被着て祭り的なのにするとか……」


「女の子ならチアもいいよね~」


応援合戦で何をするのかを考える瀬那とナル。
瀬那は真剣に考えてるとして、ナルは不純すぎんだろ。


「あとは応援団とかもあるよね」


「おぉ、学ラン着てな!」


あれ??何か知らねーけどりょーすけの応援団っていう言葉でまた女子の目が光った気がする……。


「学ランなら応援合戦いいかもね」


やる気無しのカナから意外な言葉。
そういや学ラン好きだって言ってたな。