「何で……突然……」
離婚して引っ越してから1度も会っていない父さん。
なのになぜ??……
「っ!?」
ケーキの箱の隣に添えられていたのは白い便箋。
見なくていいもの……開かなくていいもの……。
わかっているのに……。
「何??……この手紙……」
《奏へ
誕生日おめでとう。
生クリーム嫌いなお前のためにこのケーキ達を送ります。
奏は霧南での生活をどう過ごしていますか??
もし、何か、少しでも辛いことがあるのなら、俺のところへ来ないか??
お前はケーキ作りも上手かったし、将来的には俺の跡を継げるくらいだ。
お前もこっちへ来た方が、母さんや兄さんに気を使わずケーキ作りや陸上が出来るんじゃないか??
いい返事が来るのを待っています》
「ふざけんなよ……ふざけんなよっ!!……こんなものいらないっ!!」
ずっと見てきたんだ。
母さんが、自分のせいで俺達に迷惑かけてるって苦しんでいる姿を……。
兄さんが、長男だから頑張らないとって苦しんでいるのを……。
それなのにっ!!……。
「アンタのせいでどれだけ家族が崩れていったと思ってんだ!!」
手紙を破り、ケーキも手が汚れることなんてお構いなしにグチャグチャに潰し、ゴミ箱へ投げ捨てた。
「はぁはぁっ……」
明日も部活だ。
早く寝よう。
俺は風呂へ入りさっさと寝た。
「長坂、顔色悪くないか??」
「平気だよ」
翌日、部活でハル君にそう言われた。
俺はそれをはねのけるように交わしてスタートラインに立った。
そして聞こえたピストルの音に俺だけじゃなく、短距離の選手は一気に走り出す。
「(母さんや兄さんに気を使う??……2人が、悲しんでいるとでも言いたいのか……)」
気にしていないはずなのに、頭の中には手紙の内容が渦巻く。
「(クソッ……俺がケーキ作ったり陸上したりするのも昔からなんだよ……今更母さんと兄さんがそんなことで何を悲しむっていうの??…………っ!?……“昔から”??……)」
気付いてしまった。
父さんが書いていた意味を……。
「ケーキも陸上も……父さんから教わったものだ……」
そう口に出した瞬間、足が止まって折れるようにしゃがみ込んでしまった。
「長坂ーー!!ゴール前で休むなーー!!最後まで走れーー!!」
「(そうだ…今は部活中でタイム測っている途中……こんなことしている場合じゃない)」
400mのゴール前で俺は監督の声にハッとなり急いで立ち上がった。
その瞬間……。
「(何??これ……前が見えない……)」
目の前が暗くなった。
血が引いているような感覚に襲われた。
立ち眩みなんてアホらしい。
見えなくても進めばゴールできる。
なのに1歩踏み出した瞬間、また頭に巡る父さんの言葉。
「(俺は……ずっと母さんや兄さんを悲しませていたの??……俺は……ずっと……)」
2人を1番苦しめていたのは俺だったの??……
足が絡まる。
呼吸が乱れる。
視界が消える。
そのまま暗闇の中で俺は白線を越えることなく倒れた。
「カナデ、それは違うよっ」
「奏ちゃんのその考えは間違えてる」
目を覚ましてlibertyの5人に昨晩のことやこれからのことを話した。
最後まで話し終えると、俺の考えを首を振って否定するリョーとナル。
「カナデ、本当にそれでいいの??……」
「カナ、もっとよく考えろよっ」
怒ったように俺を見ながらそう言った瀬那と玲斗。
「ごめん……もう決めた……」
俺は父さんと関わるものを全て俺の中から消すためにケーキ作りも陸上も捨てた。
「おいっ!!お前もう走れるだろ!?なぜ陸上部へ戻って来ない!!」
退部届を渡しに最後にグラウンドを訪れた時。
俺の姿を見て走ってきたのはハル君だった。
「ごめん……」
「お前っ……陸上を……短距離を止める気なのかっ!?」
ハル君は声を荒げ、俺の腕を掴んだ。
「短距離は……俺には重すぎるよ……」
その一言を残して俺はトラックから離れた。
離婚して引っ越してから1度も会っていない父さん。
なのになぜ??……
「っ!?」
ケーキの箱の隣に添えられていたのは白い便箋。
見なくていいもの……開かなくていいもの……。
わかっているのに……。
「何??……この手紙……」
《奏へ
誕生日おめでとう。
生クリーム嫌いなお前のためにこのケーキ達を送ります。
奏は霧南での生活をどう過ごしていますか??
もし、何か、少しでも辛いことがあるのなら、俺のところへ来ないか??
お前はケーキ作りも上手かったし、将来的には俺の跡を継げるくらいだ。
お前もこっちへ来た方が、母さんや兄さんに気を使わずケーキ作りや陸上が出来るんじゃないか??
いい返事が来るのを待っています》
「ふざけんなよ……ふざけんなよっ!!……こんなものいらないっ!!」
ずっと見てきたんだ。
母さんが、自分のせいで俺達に迷惑かけてるって苦しんでいる姿を……。
兄さんが、長男だから頑張らないとって苦しんでいるのを……。
それなのにっ!!……。
「アンタのせいでどれだけ家族が崩れていったと思ってんだ!!」
手紙を破り、ケーキも手が汚れることなんてお構いなしにグチャグチャに潰し、ゴミ箱へ投げ捨てた。
「はぁはぁっ……」
明日も部活だ。
早く寝よう。
俺は風呂へ入りさっさと寝た。
「長坂、顔色悪くないか??」
「平気だよ」
翌日、部活でハル君にそう言われた。
俺はそれをはねのけるように交わしてスタートラインに立った。
そして聞こえたピストルの音に俺だけじゃなく、短距離の選手は一気に走り出す。
「(母さんや兄さんに気を使う??……2人が、悲しんでいるとでも言いたいのか……)」
気にしていないはずなのに、頭の中には手紙の内容が渦巻く。
「(クソッ……俺がケーキ作ったり陸上したりするのも昔からなんだよ……今更母さんと兄さんがそんなことで何を悲しむっていうの??…………っ!?……“昔から”??……)」
気付いてしまった。
父さんが書いていた意味を……。
「ケーキも陸上も……父さんから教わったものだ……」
そう口に出した瞬間、足が止まって折れるようにしゃがみ込んでしまった。
「長坂ーー!!ゴール前で休むなーー!!最後まで走れーー!!」
「(そうだ…今は部活中でタイム測っている途中……こんなことしている場合じゃない)」
400mのゴール前で俺は監督の声にハッとなり急いで立ち上がった。
その瞬間……。
「(何??これ……前が見えない……)」
目の前が暗くなった。
血が引いているような感覚に襲われた。
立ち眩みなんてアホらしい。
見えなくても進めばゴールできる。
なのに1歩踏み出した瞬間、また頭に巡る父さんの言葉。
「(俺は……ずっと母さんや兄さんを悲しませていたの??……俺は……ずっと……)」
2人を1番苦しめていたのは俺だったの??……
足が絡まる。
呼吸が乱れる。
視界が消える。
そのまま暗闇の中で俺は白線を越えることなく倒れた。
「カナデ、それは違うよっ」
「奏ちゃんのその考えは間違えてる」
目を覚ましてlibertyの5人に昨晩のことやこれからのことを話した。
最後まで話し終えると、俺の考えを首を振って否定するリョーとナル。
「カナデ、本当にそれでいいの??……」
「カナ、もっとよく考えろよっ」
怒ったように俺を見ながらそう言った瀬那と玲斗。
「ごめん……もう決めた……」
俺は父さんと関わるものを全て俺の中から消すためにケーキ作りも陸上も捨てた。
「おいっ!!お前もう走れるだろ!?なぜ陸上部へ戻って来ない!!」
退部届を渡しに最後にグラウンドを訪れた時。
俺の姿を見て走ってきたのはハル君だった。
「ごめん……」
「お前っ……陸上を……短距離を止める気なのかっ!?」
ハル君は声を荒げ、俺の腕を掴んだ。
「短距離は……俺には重すぎるよ……」
その一言を残して俺はトラックから離れた。
