蛍と長坂先輩が戻って来て、最後は私、神崎瑠美と荒川先輩の番。
「暗いから気をつけてね」
「はっ、はい……」
話しかけてくれる荒川先輩に頑張って答える人見知りな私。
何だかすごく申し訳ない気持ちになりながら先へ進む。
「小早川さんさぁ」
「えっ??」
突然振られたのは詩音の話。
一瞬反応を遅らせつつ、何とか声を出す。
「小早川さんね、肝試しとか平気なのかな??」
「苦手ってことはないはずですけど……心配でしたか??」
心配かと聞くと、男の人にしては大きな目を余計に大きく開いて驚いた顔をした。
「ペアさレイだったでしょ??途中とか置いて行ったりしなかったか不安」
苦笑いをしながらそう答える。
だけど私は思った「本当にそれだけなんですか??」と。
他に理由があるという確信はないけれど、それだけではない気がする。
「神崎さん、ごめんねペアぼくで」
何を言ってるのかわからなくて首を傾げれば、クスクス笑って出された名前に私は頬が熱くなった。
「そんなっ、長坂先輩はっ、そのっ……」
「あはは、カナデにイジメないでって怒られちゃうかな??」
天然で爽やかな荒川先輩。
悪気のない言葉に私は冗談でも怒ることなんてできない。
クスクス笑いながら隣を歩く荒川先輩。
詩音が楽しそうに荒川先輩の話をする理由が少しわかった気がする。
「……神崎さん」
笑い声が突然止まり、足音も共に消える。
頭上から聞こえたのは私の名前。
2歩前に出た私はその声に立ち止まり、先に立ち止まった荒川先輩の方を向く。
「カナデの中学の頃のこと知ってる??」
「長坂先輩は自分のことあまり話してくれないので……中学でlibertyのみなさんと仲良くなったということしか……」
「そっか……」
なぜ長坂先輩の中学の頃の話をしたのかわからない。
だけど、言われて初めて私は長坂先輩のこと全然知らないと思った。
「あっ、あと……陸上部の人と何かあるのかなっていうことくらいです」
「陸上部の人ってもしかしてハル君??」
「そうです、たしか長坂先輩もそう呼んでました」
少し驚いたような顔をして何かを考えるような仕草をした。
「カナデはハル君のことや陸上のこと何も言わなかったの??」
「はい、何だか聞いてほしくないというような感じでしたし……」
「うん……」
そこで話は途切れてしまい、どちらからも一言も発することなく折り返し地点まで来て参拝も終わらせた。
「カナデはね」
「??」
沈黙を破ったのは荒川先輩。
「カナデは、自分に嘘を付いているんだよ」
「嘘……ですか??……」
聞き返した私へゆっくり頷く。
「ぼくから話すことはできないけど、きっとカナデ本人から話してくれると思う……だからね……」
願いを込めるようにゆっくりとまばたきをして揺れた瞳。
長坂先輩のことを心配しているのだとわかる。
私も真剣な顔付きをして荒川先輩の次の言葉を待つ。
「だからね……待ってあげてほしいんだ……カナデの言葉を聞いてあげてほしいんだ」
必死に何かを訴えかけるような言葉。
それに頷くことしかできない。
だけど、頷いただけで荒川先輩は安心したように顔を綻ばせた。
「ほら、みんな待ってるよ、行こうか」
ゴール直前、すぐ近くに見えるみんなの姿。
「おかえり瑠美ちゃん」
歩いて迎えに来てくれた長坂先輩。
そういえば肝試しだったと今更気が付いた。
「人見知りなのに頑張ったね」
微笑むその顔に私も笑い返す。
「カナデは、自分に嘘を付いているんだよ」
頭に浮かぶ荒川先輩の言葉。
その言葉の意味を知るのがもうすぐなんて、この時は気付いていなかった。
「暗いから気をつけてね」
「はっ、はい……」
話しかけてくれる荒川先輩に頑張って答える人見知りな私。
何だかすごく申し訳ない気持ちになりながら先へ進む。
「小早川さんさぁ」
「えっ??」
突然振られたのは詩音の話。
一瞬反応を遅らせつつ、何とか声を出す。
「小早川さんね、肝試しとか平気なのかな??」
「苦手ってことはないはずですけど……心配でしたか??」
心配かと聞くと、男の人にしては大きな目を余計に大きく開いて驚いた顔をした。
「ペアさレイだったでしょ??途中とか置いて行ったりしなかったか不安」
苦笑いをしながらそう答える。
だけど私は思った「本当にそれだけなんですか??」と。
他に理由があるという確信はないけれど、それだけではない気がする。
「神崎さん、ごめんねペアぼくで」
何を言ってるのかわからなくて首を傾げれば、クスクス笑って出された名前に私は頬が熱くなった。
「そんなっ、長坂先輩はっ、そのっ……」
「あはは、カナデにイジメないでって怒られちゃうかな??」
天然で爽やかな荒川先輩。
悪気のない言葉に私は冗談でも怒ることなんてできない。
クスクス笑いながら隣を歩く荒川先輩。
詩音が楽しそうに荒川先輩の話をする理由が少しわかった気がする。
「……神崎さん」
笑い声が突然止まり、足音も共に消える。
頭上から聞こえたのは私の名前。
2歩前に出た私はその声に立ち止まり、先に立ち止まった荒川先輩の方を向く。
「カナデの中学の頃のこと知ってる??」
「長坂先輩は自分のことあまり話してくれないので……中学でlibertyのみなさんと仲良くなったということしか……」
「そっか……」
なぜ長坂先輩の中学の頃の話をしたのかわからない。
だけど、言われて初めて私は長坂先輩のこと全然知らないと思った。
「あっ、あと……陸上部の人と何かあるのかなっていうことくらいです」
「陸上部の人ってもしかしてハル君??」
「そうです、たしか長坂先輩もそう呼んでました」
少し驚いたような顔をして何かを考えるような仕草をした。
「カナデはハル君のことや陸上のこと何も言わなかったの??」
「はい、何だか聞いてほしくないというような感じでしたし……」
「うん……」
そこで話は途切れてしまい、どちらからも一言も発することなく折り返し地点まで来て参拝も終わらせた。
「カナデはね」
「??」
沈黙を破ったのは荒川先輩。
「カナデは、自分に嘘を付いているんだよ」
「嘘……ですか??……」
聞き返した私へゆっくり頷く。
「ぼくから話すことはできないけど、きっとカナデ本人から話してくれると思う……だからね……」
願いを込めるようにゆっくりとまばたきをして揺れた瞳。
長坂先輩のことを心配しているのだとわかる。
私も真剣な顔付きをして荒川先輩の次の言葉を待つ。
「だからね……待ってあげてほしいんだ……カナデの言葉を聞いてあげてほしいんだ」
必死に何かを訴えかけるような言葉。
それに頷くことしかできない。
だけど、頷いただけで荒川先輩は安心したように顔を綻ばせた。
「ほら、みんな待ってるよ、行こうか」
ゴール直前、すぐ近くに見えるみんなの姿。
「おかえり瑠美ちゃん」
歩いて迎えに来てくれた長坂先輩。
そういえば肝試しだったと今更気が付いた。
「人見知りなのに頑張ったね」
微笑むその顔に私も笑い返す。
「カナデは、自分に嘘を付いているんだよ」
頭に浮かぶ荒川先輩の言葉。
その言葉の意味を知るのがもうすぐなんて、この時は気付いていなかった。