「ここ足場悪いから気をつけてね」
「あっはい」
あたし伊吹舞璃は、暗闇の中を後藤先輩と2人で歩いています。
「ごめんね、どうしても肝試しやりたくなってさあ」
「いえいえ、あたし達もヒマでしたから」
libertyのみなさんから「肝試しをしない??」と誘われたのは夕方頃。
あたし達はそれに了承し、夜の神社へ集合した。
肝試しは2人1組で回ることになり、砂に描かれたあみだくじによってペアと順番を決めた。
あたしのペアは後藤先輩……なんだけど……。
後藤先輩と1対1で話したことはなく、正直気まずい。
「(杏奈はいつも楽しそうに話してるけど……あたしはどうやって話そう??)」
チラッと見上げると、長い金色の髪が風に吹かれてキラキラと揺れている。
「どうかした??」
「えっ!!?」
あたしの視線に気付いた後藤先輩に突然話しかけられ素っ頓狂な声を出してしまった。
「えぇっと、杏奈が先輩の髪綺麗だって言ってたの思い出して……」
「あぁ、トナミちゃんよくボクの髪褒めてくれるんだよね」
「杏奈は先輩みたいにストレートがよかったらしいので」
「そうかな??トナミちゃんはフワフワの方が似合ってるのに」
何だかすごく楽しそうにそう話してくれる後藤先輩。
いつの間にか気まずいと思っていたのはどこかへ消えていた。
「あのさ……」
突然、真剣な顔になり声のトーンを落とす先輩。
あたしはそれに少し身構えた。
「レイの妹のこと知ってる??」
「紬ちゃんのこと……ですか??」
「自分から話したのか……成長したなぁレイ」
ははっと笑う後藤先輩にあたしはハテナマークを頭に浮かばせていた。
「レイはさ、自分は非力だって、そう思ってる……ボクやlibertyのみんなはそうは思わない……だけどレイはいつだって自信がないんだ」
「………」
あの時岡本先輩本人から教えてくれた先輩の過去。
いつも何事にも真っ直ぐで、自信を持って自分の行動をする先輩。
なのに、あの日見た先輩の姿はとても切なそうで……自信がなくて……痛々しいと思った。
「今までわざわざ誰かに自分から言うなんてことはなかった」
「えっ??」
いつの間にか考え込んでしまっていたあたしの頭上から聞こえた後藤先輩の声。
「伊吹さんに自分から話すなんて意外だった」
優しく微笑む後藤先輩の姿を見て、「あぁ、やっぱり岡本先輩の幼なじみだな」と思った。
「これでよし、それじゃあ戻ろうか」
気付けば折り返し地点まで来ていた。
あたし達はルールであった参拝を済ませ、ゴールへ向かって再び歩き出した。
「伊吹さん全然驚かなかったね」
「話していたら肝試しのこと頭から離れてました」
「なんかそれレイに似てるわ」
ゴール手前、待っているみんなの声はまだ少し遠くて、後藤先輩の笑う声だけが聞こえる。
「伊吹さん」
名前を呼ばれ見上げる。
「レイのこと見ててね」
「えっ??どういう……」
意味ですか??
その言葉を聞かないまま、後藤先輩はみんなのもとへ行ってしまった。
「おかえり伊吹」
いつも聞いているその声に振り向くと、ニカッと笑う岡本先輩がいた。
「おもしろかったか??」
あの日見た先輩とは違い、いつもと同じ先輩。
「見ててね」そう言われたけれどあたしはそれで何かわかるの??何か変わるの??
今はまだわからないその意味を考えながら、岡本先輩へ笑いかけるあたしの行動は間違っているのかなぁ??
「あっはい」
あたし伊吹舞璃は、暗闇の中を後藤先輩と2人で歩いています。
「ごめんね、どうしても肝試しやりたくなってさあ」
「いえいえ、あたし達もヒマでしたから」
libertyのみなさんから「肝試しをしない??」と誘われたのは夕方頃。
あたし達はそれに了承し、夜の神社へ集合した。
肝試しは2人1組で回ることになり、砂に描かれたあみだくじによってペアと順番を決めた。
あたしのペアは後藤先輩……なんだけど……。
後藤先輩と1対1で話したことはなく、正直気まずい。
「(杏奈はいつも楽しそうに話してるけど……あたしはどうやって話そう??)」
チラッと見上げると、長い金色の髪が風に吹かれてキラキラと揺れている。
「どうかした??」
「えっ!!?」
あたしの視線に気付いた後藤先輩に突然話しかけられ素っ頓狂な声を出してしまった。
「えぇっと、杏奈が先輩の髪綺麗だって言ってたの思い出して……」
「あぁ、トナミちゃんよくボクの髪褒めてくれるんだよね」
「杏奈は先輩みたいにストレートがよかったらしいので」
「そうかな??トナミちゃんはフワフワの方が似合ってるのに」
何だかすごく楽しそうにそう話してくれる後藤先輩。
いつの間にか気まずいと思っていたのはどこかへ消えていた。
「あのさ……」
突然、真剣な顔になり声のトーンを落とす先輩。
あたしはそれに少し身構えた。
「レイの妹のこと知ってる??」
「紬ちゃんのこと……ですか??」
「自分から話したのか……成長したなぁレイ」
ははっと笑う後藤先輩にあたしはハテナマークを頭に浮かばせていた。
「レイはさ、自分は非力だって、そう思ってる……ボクやlibertyのみんなはそうは思わない……だけどレイはいつだって自信がないんだ」
「………」
あの時岡本先輩本人から教えてくれた先輩の過去。
いつも何事にも真っ直ぐで、自信を持って自分の行動をする先輩。
なのに、あの日見た先輩の姿はとても切なそうで……自信がなくて……痛々しいと思った。
「今までわざわざ誰かに自分から言うなんてことはなかった」
「えっ??」
いつの間にか考え込んでしまっていたあたしの頭上から聞こえた後藤先輩の声。
「伊吹さんに自分から話すなんて意外だった」
優しく微笑む後藤先輩の姿を見て、「あぁ、やっぱり岡本先輩の幼なじみだな」と思った。
「これでよし、それじゃあ戻ろうか」
気付けば折り返し地点まで来ていた。
あたし達はルールであった参拝を済ませ、ゴールへ向かって再び歩き出した。
「伊吹さん全然驚かなかったね」
「話していたら肝試しのこと頭から離れてました」
「なんかそれレイに似てるわ」
ゴール手前、待っているみんなの声はまだ少し遠くて、後藤先輩の笑う声だけが聞こえる。
「伊吹さん」
名前を呼ばれ見上げる。
「レイのこと見ててね」
「えっ??どういう……」
意味ですか??
その言葉を聞かないまま、後藤先輩はみんなのもとへ行ってしまった。
「おかえり伊吹」
いつも聞いているその声に振り向くと、ニカッと笑う岡本先輩がいた。
「おもしろかったか??」
あの日見た先輩とは違い、いつもと同じ先輩。
「見ててね」そう言われたけれどあたしはそれで何かわかるの??何か変わるの??
今はまだわからないその意味を考えながら、岡本先輩へ笑いかけるあたしの行動は間違っているのかなぁ??