「マネージャーですか??」


「俺ね、バスケ部とlibertyっていうヒマつぶしの部活に入ってんの主はバスケ部なんだけどな」


そう言ってニッと笑ってバスケ部について話してくれた先輩。


「楽しそうですね。バスケのマネージャー考えてみようかな」


「まだ誰も希望の子いなくて困ってたんだよ。だから前向きに検討よろしく」


そう言ってふと立ち上がり体育館の扉へ手をかけた先輩。


「おっ!開いてる!ラッキー、入っちゃおうぜ~」


また突然にそんなことを言い、スタスタと中へ入って行った。
あたしはそれを追いかけるように急いで着いて行った。
すると、先輩は突然倉庫からバスケットボールを1つ取り出しドリブルし始めた。


「ちょっと上着持ってて」


バサッと投げられた上着を慌ててキャッチした後、先輩へ目を向けてみると。


「わぁ……」


ボールをドリブルしゴールへ投げ入れられた。そしてそれをもう一度ドリブルし反対側のゴールへ向かってまたシュート。
今度はこちらへ戻って来てスリーポイントから綺麗な放物線を描いて投げ入れられたボール。
そしてあたしへ向かいイエーイとキメポーズをした岡本先輩。

とても綺麗でかっこよかった。
中学の時に見たバスケ部のバスケとは比べ物にならないほど。
本当に綺麗だと思った。
つい感嘆の声を上げてしまうほどに。


それから先輩はしばらくシュートやドリブルをして見せてくれた。
見ているだけでとても楽しくて、気がついたらもうすぐ昼休みが終わろうとしていた。


「上着ありがとう。悪いな、付き合わせちゃって」


「全然!むしろあたしの方こそ楽しませてもらいました。あたし今日バスケ部に見学行きます。マネージャーになるのとても楽しそうです」


毎日こんなに凄いバスケを近くで見てみたい。
そう思ったあたしはマネージャーになることを決めた。


「そっか!伊吹なら大歓迎されるよ」


キーンコーンカーンコーン。


「ヤバッ!これ予鈴じゃん!伊吹早く教室戻るぞ!」


「あっ!はい!!」


バタバタと2人揃って教室がある校舎へ向かい階段でそれぞれ別れた。

何だか今日は走ることが多いな。なんて考えながら、とりあえず必死に廊下を走った。
なんとかギリギリで教室へ戻って来れたあたしは、自分の席へ座ると、窓から見える体育館へ視界を奪われた。
そしてさっきまで一緒にいた岡本先輩のことを思い浮かべた。

先輩は間に合っただろうか??
もし間に合っていなくても、きっと先輩はまた先生に向かって言うんだろうなぁ。


「(校則は破るためにあるんだよ!!って)」


そんなことを考えながら心の中でクスッと笑い、あたしは授業へ集中した。




























「レイ!お前ボクを置いて勝手に逃げたな!!」


「あれ??レイと一緒に走って行ったのセナじゃなかったの??」


残り1分半で間に合い、教室へ入り自分の席へ座ると、机をバンッと叩いて怒ってきた瀬那と、それを聞いて質問をしてきたりょうすけ。


「こいつ1年生の女の子と逃げやがった!!」


「セツ子どんまい」


指を差してきた瀬那へププッと笑ったナル。


「玲斗が女の子といたなんて珍しいじゃん」


教科書を机の上に出しながら言ったカナの言葉に、自分自身も確かにそうだと今更気付いた。


「俺だけ逃げるの悪いしな」


そう言うと、ボクは!?と叫んだ瀬那のセリフにかかるように鳴ったチャイム。
先生の登場にしぶしぶ前を向いた瀬那。

俺は授業を真面目に受ける気もなくて窓から見える体育館を眺めた。


「(伊吹間に合ったかな??)」


さっきまで一緒にいた、俺のバスケを見て感動して驚いた顔をした伊吹のことを思い浮かべ、ククッと笑ってしまった俺は先生から当てられたのも無視して体育館を眺め続けた。
今日の放課後が楽しみだと、そう思いながら。