「お姉さん貴女をテイクアウトで……って痛いっ!!」


昼になって海の家へやってきた。
水着の可愛いお姉さん達が定員として働く姿に声をかければ、玲斗から愛の鞭……と思いたい、頭を思いっきり殴るという行為を受けた。


「いいから早く注文しろよ」


「ナルみん学習しないな」


バシッと音が鳴りながら背中を思いっきり叩いてきた玲斗とセツ子。


「痛そうだよ」


「赤くなってるじゃん」


ジンジン痛む背中を見て顔を歪ませ心配してくれるりょう。
一方の奏ちゃんはもちろん心配なんてしてくれず爆笑する。


海の家で昼食を取り終わり、再び俺達は海へ。


「ねえねえ、今ヒマ??」


「さっき海の家で見かけてイケメンだから声かけちゃった!」


後ろから聞こえた声に振り向けば、そこには知らないお姉さん達。
パッと見大学生くらいの5人のお姉さん達は俺達1人につき1人が近付いて来て「一緒に遊ぼう??」と声をかけてくる。
所謂逆ナンだ。


「みんな高校生??」


「……触らないでよ、迷惑なんだけど」


腕に抱きつこうとしたのをパッと振りほどき真顔で冷たく言い放つ奏ちゃんにビクッと怯えるお姉さん。
奏ちゃんは何も無かったかのようにスタスタと歩いて行く。


「連絡先交換しよ??」


「初対面なのに馴れ馴れしい」


手を掴んでこようとしたのを避けて、お姉さんに心底嫌そうな顔を向ける玲斗。
驚いた顔をするお姉さんを置いて早足で奏ちゃんを追いかける。


「せめて名前教えて??」


「そういうの他の人にしてください」


指を触ってこようとしたのをサッと避けて、笑ってそう言い放ったセツ子。
呆然とするお姉さんを無視して玲斗と奏ちゃんの名前を呼んで走って行く。


「あっ、ねぇ」


「ごめんなさい、それじゃあ」


肩に触ろうとしたお姉さんの手が届かない範囲へ後ろへ下がり、困ったような顔をし、一礼して3人の背中を追いかけるりょう。


「ごめんね～、俺の連れノリ悪いからね～」


ニコニコしながらそう言うと、ホッとしたように笑う俺の目の前のお姉さん。


「でも、俺も一緒に遊べないよ、俺1人だったらOKなんだけどね～」


「それならせめて連絡先交換しようよ??」


「ん～～……ダ～～メ!それじゃあね可愛いお姉さん達」


ヘラヘラ笑う俺に連絡先交換を要求してきた。
それくらいならと、そう思ったのに、頭にぼんやりと浮かんだ女の子のことを考えていると拒否する言葉が口から出ていた。

ぼんやり浮かんだ女の子は霧がかかったように顔がわからない。
だけど俺はこの子のことをよく知っている気がする。
そんなことを考えながら若干イラつきが見える4人の後ろ姿を追いかける。