「それじゃあまたね」


「うん、バイバイ」


しばらく色んな話をして、そろそろ帰ろうかとなった時、アタシは松岡先輩に用事があると言われていたことを思い出して4人とここで別れることにした。

手を振り笑って見送った後、松岡先輩へ「用事終わりました」と送れば、「体育館横の日陰になってるベンチね」とすぐに返事がきた。


「ここはいつも涼しいなぁ…」


ゆったりとした風だけでも充分涼しいここはアタシの大好きな場所。
風の涼しさに目を閉じていると、後ろから足音が聞こえ、振り返るとそこには松岡先輩がいた。


「涼しいね~」


同じように5秒くらい目を閉じてから、ゆっくり目を開いてアタシの座るベンチへ腰掛けた。


「蛍ちゃん今日誕生日だよね、おめでとう」


その言葉と共に鞄から取り出されアタシへ差し出されたものを不思議そうに見れば、「何で受け取らないの」と笑い出した。


「プレゼントだよ、誕生日おめでとうって」


「あっ、ありがとうございます」


まさか誕生日を知っているとは思わなくてぎこちなくそれを受け取れば、満足したように笑いベンチから立ち上がった。


「えっ??用事は??」


「えっ??それだけど」


当然のようにそう言った先輩。


「部活の用事かと……これなら部活の時でもよかったのに……」


わざわざ時間を作って渡してくれたことが何だか申し訳なくなってそう言えば、頭上から名前を呼ばれた。


「蛍ちゃんのために選んだ物だからちゃんと渡したかったんだよ。俺の誕生日の時もそうしてくれたようにね」


ヘラヘラとした笑い方ではなく、ふわっと笑い帰って行った先輩。
アタシは何だか頬が熱くなるのを感じて、ベンチから勢いよく立ち上がり家へ帰った。







家に帰り、自分の部屋でもらったプレゼントのラッピングを解いた。
詩音からは手帳とシュシュ。
舞璃からは日傘。
杏奈からはハンドバック。
瑠美からはクッキーとアームウォーマー。
どれもアタシの好きな物で見ていると笑顔が零れた。


「松岡先輩からは何だろう??」


開けて中を取り出してみると、そこには鈴蘭をモチーフにしたイヤリングと浴衣の帯留めが入っていた。
帯留めは、きっともうすぐ夏祭りがあるからで、イヤリングは……。


「何でアタシが鈴蘭が好きって知ってるん??……」


これは偶然??
それとも知っていたの??

わからない答えをグルグル考えているうちに、また頬が熱くなるのを感じた。


「嬉しいと思うのはどうして??……」


答えなんてわからない。
だけど素直に嬉しいと……そう思ったことだけはわかる。

耳に付けてみたイヤリングを見ると、どうしてこんなにも素直に笑顔になれるのかな……。