まさかこんな日に限ってリボンを忘れてくるなんて。


「伊吹、お前昼休み職員室な」


それは今から2日前。
入学式が終わり服装検査をした日。
その日あたし、伊吹舞璃(いぶき まり)は制服のリボンを忘れて来ていた。
もちろん、服装検査では引っかかり、あたしは入学早々職員室へ呼び出されることに。


「こんな失敗するなんて思わなかった……」


先生はあたしがただ忘れて来たのだということを分かってくれた。でも、名目上一応職員室へ行かなければいけない。


中学時代から仲のいい友達に職員室へ行くことを伝え、重い足取りで職員室へ向かった。


ガラッ。


「失礼しまー……」


「だからっ校則は破るためにあるんだって何回言えば分かるんだよ!」


入室の挨拶をしている時、あたしの声をかき消した声へ目を向けると、指導の先生に向かって信じられないことを言っている眼鏡を掛けている男子生徒が1人いた。
そしてその近くには、もう1人の指導の先生に心にも思っていないスミマセンを繰り返している金髪で長髪の男子生徒が1人。
スリッパの色からして2年生であることが分かった。


「(どうしよ…あの眼鏡の先輩と言い争っている先生にあたしも呼び出されてるのに……)」


先生相手に楯突いている先輩が少し怖くて、あたしもそこへ行かなければいけないのに行けない。


「ん??来たか伊吹」


「!!」


言い争っていた先生はふとあたしに気付き声をかけ、こちらに来るように言った。
その声に先輩も私へ振り返った。


「(うわぁー……)」


緊張と少しの恐怖を持ちながら先輩の隣へ並んだ。


「ったく、伊吹はもっと注意しろ。岡本は毎月毎月同じことを言わせるな!!」


この先輩は毎月この攻防戦を先生と繰り返しているらしい。


「先生、お電話です」


「あっはい。お前達ここにいろよ」


そう言って先生は電話をしに行った。


「まったく、校則なんて堅苦しいよな~」


「えっ??」


「俺2年4組の岡本玲斗。ちょっと驚かせちゃったか??俺毎月こんな感じで先生と言い争ってるから気にするなよ」


「あっ、あたしは1年4組の伊吹舞璃です。少し驚いちゃいましたけど大丈夫です」


突然話しかけられたことに驚いたけど、悪い人ではなさそうで少し安心した。