先輩が掛け持ちで、中学時代からの大切なお友達と一緒に1年生の時に立ち上げた部活は自由や解放を意味するlibertyという名前の部活らしい。
先輩によるとlibertyは自分達のヒマをつぶすために作られたものらしく、自分達が卒業する3年間限定の部活らしい。


「楽しそうな部活ですね」


「いつでも遊びにおいで、騒がしい人が多いけどね」


それに私はありがとうございますとお礼を言い笑った。


「小早川さんは何か部活決まった??」


「それが…全然まだで……」


先輩からの質問にため息にも似た息を吐いた。


「それなら、ぼくから1つオススメの部活」


右手の人差し指を立て、1を示した。


「空手部のマネージャーなんてどう??」


「でも、空手のルールなんてイマイチよく……」


せっかくの先輩からのお誘いだが、私は空手のルールをあまりよく知らない。


「大丈夫だよ、そんなに難しくなんてないよ。それに、空手のマネージャーは他の運動部のマネージャーよりも忙しくないからここへはいつでも来れるよ」


「そうなんですか??」


「おっ、ちょっと食いついたね。うん、そうだよ」


部活で忙しくなりここへ来られなくなるのは嫌だと思っていた私は、その話を聞き空手部のマネージャーについて考えてみることにした。


「そろそろぼくは教室へ戻るね。次移動教室なんだ」


そう言って椅子から立ち上がり椅子を戻した先輩。
それを見て、私はあることを思い出した。


「あのっ先輩!」


既に背を向けていた先輩へ声をかけると、先輩は振り返った。


「あの時、私が一番上の棚に手が届かなくて本が取れなかったのも知っていて、だから先輩は私の手が届く場所へ、私に分かるよう表紙を向けて置いてくれていたんですか??あの本を取ってくれたのは先輩なんですか??」


思い切って私は先輩へ聞いてみた。


「危ないから届かないものはぼくへ言ってね。あと、マネージャーの件考えてみてね」


「そうだよ」とは言わなかった。
だけど、やっぱり先輩が取ってくれたのだと分かった。
「届かないものはぼくへ言ってね」は、またここで会えるということ。

サラサラそうな黒いストレートの髪、左手首に付けられたバングル。
そして、優しい笑顔と話し方の先輩。
後ろからでは分からなかった特徴を知ることができた。
相手は先輩だけど、また仲良くお話したいと、そう思えた。































「リョウキチー」


後ろから名前を呼ばれ振り返るとlibertyのメンバーがいた。


「リョーさっき女の子といたね」


「あれ誰??1年??」


カナデとレイは首を傾げながら聞いてきた。


「小早川詩音ちゃんっていう子でね、本が好きな子でね、図書室通いをしている子なんだよ。あと、空手部マネージャー候補ね」


「へ~、図書室通いとかりょうに似てんじゃん」


ナルにそう言われ、確かに考えてみればぼくと小早川さんは似ているところが多かったかもしれない。


「そうだね、だから仲良くなれそうだよ」


あの図書室へ通っている人は少ない。
だけど、新しいお客さんに図書室も喜んでいるだろう。
ぼくも本の友達が出来て嬉しいと思った。
これから仲良くなれたらいいなぁなんて、そう思いながら教室へ4人と一緒に帰って行った。