その場からなかなか動かない私を見て、誰かが声をかけた。
「彼氏?」
私は黙って頷く。
ねぇ、だって、嘘でしょう?
「デートの最中に……」
初めての、デートだったの。
幼なじみとは言え、お互いそれなりに緊張していた。
どちらからともなく手を繋げるようになったのは、昨日だって―――。
「警察だ」
「救急車もきた」
「危ないわ、少し下がりましょう」
腕を引かれた瞬間、視界に飛び込んだのは、真っ赤に染まった恭ちゃんの左半身。
『樹里』
笑って私の名前を呼ぶ恭ちゃんが、
『俺、樹里が好きなんだけど』
一週間前、告白してきた恭ちゃんが、
『樹里!』
今はもう、いない。
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