初デートの日、空はどんよりと曇っていた。
何かを予期するような、重たい景色だった。
「樹理」
後ろから名前を呼ばれて振り向くと、そこには付き合って間もない彼氏―――恭ちゃんがいた。
「遅いよ、恭ちゃん」
「ごめんって、アイス買ってやるから」
小さい頃からずっと一緒にいた、いわゆる幼なじみだった恭ちゃんに告白されたのは、一週間前の事だった。
『好きなんだけど』
恭ちゃんが不器用な事は知っていたし、もちろんこの言葉が、彼の精一杯だった事も知っていた。
長い間隣にいれば、安心にも似た感覚がある。
私は恭ちゃんと付き合う事に、何の抵抗もなかった。
.
