「真紀……なん…で。」


「ごめん… 真人。

やっぱり…… やっぱりあたしは…」


真紀は手を小刻みに震わせて、目に涙を

一杯に溜めながらも精一杯堪えて言った。



「真人は…誰にも渡せないっ

…あたしだけをみてよ……真人!」


「ま…き……」

真人は途絶えそうな意識の中、幼い頃の

記憶を走馬灯のように思い出していた。












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……ねぇっ…しんじ!!


「真二ってば!!

まぁたこんなとこにいるのー?

好きだね、公園っ」


「真紀…か。 何しに来たんだよ。

トミさんに説教されるぞ…。 」


「だいじょーぶ、だいじょーぶ!

真人を探して来るって言ってあるか

らっ♪」


「…ほんと、そういうとこだけは賢い

な。」


「まぁまぁ。…そんなことより…

それ、何? なんかの思い出!?」



「……別に。」



「あっ、もしかしてぇー…彼女?!」



「ちっ…ちげぇ「あーっ! 赤く

なってんじゃーんっ! ふーん……。」





真二は真紀に自分の宝物の話をした。

たった1人だった自分に唯一優しくして

くれた人の事。



このキーホルダーを自分の為に、

必死で貯めたおこづかいをはたいて真二に

プレゼントしてくれた事。


心の底でいつも心配してくれていた……

由美子と言う、女の子の事を…。





「…ねぇ、真二 !! 今度は私が真二を支え

るっ。」



「なんで、真紀が…」




「…好きなのっ。……真二の事。

ずっと好きだった。


だからさっ……

真二の隣にはいつだって私がついてるんだ

からねっ!!」





真紀はいつも真二の隣にいた。


施設に入ってからも1人だった真二をい

つも追いかけてきた。


いつも口では冷たくあしらっていた真二

もそんな彼女が、その時の心の支えだった

のかもしれない。



「いつまで、追いかけて来れるんだろう

な…」



「ずっとよ。」



真紀は当たり前と言わんばかりにそう

言った。




「……なら…勝手にしろ…。」




真二のそんな答えに真紀は嬉しそうに

笑った。


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そうだった……なぜ、気付かなかった。



真紀は……ずっと、隣にいたがっていた

じゃないか。


俺は……自分の事しか考えていなかった

んだな。





真紀……ごめん。





…………由美子…姉……




真人の意識は途切れたが、その目は何か

を見ているように輝いていた。