誰もいなくなった教室。
今がチャンス!
そう思い、私は電話をかけた。
『プルルルル』
「はい」
相手はたった1コールで出た。
「先程はどうも」
「佳奈さん勘弁してくださいよ!前説は1ヶ月前からやる人が決まってるんですから・・・」
「私に逆らう気?あんたなんかすぐクビにできんねんで?」
「そ、それだけはご勘弁を・・・」
「わかってる。今日はちゃんと働いてくれたから。今日は許してあげるわ」
「ありがとうございます。でも、何であいつらを?」
「あんたには関係ないやろ、桜井くん。じゃ、当日はよろしく」
そう言って私は電話を切った。
ついさっき、美味香がCampusにトークライブのゲストにスカウトされた。
ずっと携帯をイジっていた私は、誰にも気づかれることなく桜井くんとの連絡に成功。
そしてすぐ、2人に連絡された。
「意外と簡単よな〜・・・」
そう呟いて、私は席に座った。
私のパパは吉本興業の社長。
このことを知ってるのは、私と私の家族、それに限られた社員と芸人だけ。
私と空海は幼なじみ。
そして、私の初恋の人・・・
幼い頃、家が近所だった私達は毎日のように遊んでいた。
でも、小学校に上がる頃、空海は京都から大阪へと引っ越して行った。
もう会うことはないと思っていた。
それでも、私は1度も空海のことを忘れたことはなかった。
忘れたくても、忘れられなかった。