「寝言か・・・」
姫野は何かを求めるように俺の手を強く握る。
そう言えば、まだ手・・・離してなかったな・・・
すると、姫野は耳を疑いたくなるような発言をした。
「・・・・・・山野さん・・・」
「!?」
そう言って、姫野はふわりと笑った。
山野・・・
今、山野って言った・・・?
何故・・・?
今傍にいるのは俺なのに・・・
手を握っているのは俺なのに・・・
「俺・・・姫野のこと、美味香ちゃんって呼んだらあかんの・・・?」
好きなのに・・・
こんなに好きなのに・・・
大好きなのに・・・
姫野に会ったあの日から・・・
山野と手を繋いでいたあの時から・・・
人生で初めての本気の恋。
涙が頬を伝う。
姫野が今、傍にいてほしいのは・・・
姫野が今、手を握ってほしいのは・・・
姫野が今、話をしたいのは・・・
俺じゃない・・・
「山野なんや・・・」
一度溢れた涙は止まらない。
俺の膝の上にぼたぼたと音を立てて落ちる。