「私・・・芸人辞めたいです。
こんなにひどいことがずっと続くんなら・・・
いっそ・・・辞めたい・・・」
私は、カッと頭に血が上った気がした。
次の瞬間、思いっきり美味香にビンタした。
頭では思ってもないことなのに、次々に体が勝手に動く。
「アホ!アホアホアホ!アホ美味香!
何で辞めるなんか言うの!?
あんなに楽しそうにネタ作ってたやん!
悠斗兄ちゃんに食レポのコツ教えてもらったり
大ちゃんにリアクションの特訓してもらったり
あんなに一生懸命やってたやん!
お笑いの話してる時が1番楽しいんじゃなかったん!?
ネタ見せが生きがいじゃなかったん!?
お客さんに笑顔になってもらうのが自分の生きる道じゃなかったん!?
Campusさんのトークライブに呼ばれた時もあんなに嬉しそうやったやん!
それやのに・・・
何で辞めるなんか言うの!?」
「・・・・・・・・・」
美味香は私がビンタした頬をおさえながら、静かに泣いている。
でも、何も言い返してこない。
「もう知らん!
美味香なんか知らん!」
私はそう言って病室を飛び出した。
途中で誰かとぶつかったが、謝っただけで、顔は見ていない。
「待て!愛海!」
悠斗兄ちゃんが私を追いかけてくる。
病院を出たところで、私は悠斗兄ちゃんに捕まった。
「待てって言うてるやろ!」