以来、男の人の手を私は知らない。
男の人の手は、みんなこんなに暖かいんだろうか・・・
そんなことを考えながら歩いていると、男の人が話しかけてきた。
「ところで、どこ希望したん?」
「あ、あの、お笑い芸人コースを・・・」
「へぇ〜!俺と一緒や!」
そう言って、男の人はニコッと笑う。
その笑顔がとても可愛くて・・・
鼓動が早くなるのを感じた。
この気持ちが、女の子がよく言う、恋ってやつなのかな・・・
そんなことを考えていると、1人の男の人によって道がふさがれた。
「おい、山野!ネタ合わせは?」
「あ、ごめんごめん!いや、今道案内の途中やし・・・」
そう答えた彼は、私が男の人に見えるように前に出した。
彼とは違い、細い体と高い身長。
彼とは真逆、と言うべきだろうか。
「ん?彼女?」
「アホ!違うわ!迷っとったから案内してるだけやし!」
「よかった〜山野に先越されたかと思った〜・・・
めっちゃ可愛いし完全に負けたと思った・・・」
(この人、山野さんっていうんや・・・ネタ合わせってことは、相方さん?)
キョトンとする私に、山野さんは
「あ、ごめん、自己紹介遅れたな・・・
俺は山野健太。
こっちは相方の浜松雄也。
よろしくな!」
と、自己紹介してくれた。
(山野健太・・・)
「で、どこ行くん?」
浜松さんが聞く
「あ、選択コース用紙を・・・」
「えっ!?後10分で終了してまうで!」
「えええっ!?」
「うわ、やばい!急ごう!」
そう言って、山野さんは私の手を引いて走り出す。