「おい!愛海!遅刻するで!」
「わかってる〜!」
朝8時、学校が始まるまであと50分。
ついさっき起きた私は、悠斗兄ちゃんに急かされながら急いで準備する。
(もうちょっと早く起こしてや・・・)
心の中で何度も不満を言いながら支度を終え、玄関まで走る。
玄関を開けようとしたその時・・・
「おい!愛海、朝ご飯は?」
「そんなん食べてる時間ない!」
「あかん!食べて行け!」
今、朝ご飯なんか食べてたら完全遅刻・・・
(もうゆっくり食べよう・・・)
そう思い、席に着いた私に悠斗兄ちゃんが声をかける。
「10分で食べろ!」
「はぁ!?10分!?」
「グズグズすんなよ!」
そう言い残し、悠斗兄ちゃんはリビングを出て行った。
幼い頃に両親を亡くした私は、ずっと悠斗兄ちゃんに育ててもらった。
だから、私は反抗期を知らない。
「親に口答えする息子」とかよく聞くけど、全くわからない。
「父親と洗うもの別々にして」とか、なぜなのか全く分からない。
そうしている間に、きっちり10分で食べ終えた私は、悠斗兄ちゃんを呼ぶ。
すると、外から声が聞こえた。
玄関を開けると、ヘルメットをかぶった悠斗兄ちゃんがいた。
悠斗兄ちゃんはヘルメットを私に投げ、「はよ乗れ」と言った。
「でも自転車・・・」
「遅刻してもいいんか?」
仕方なく指示に従い、急いでバイクに乗った。