時は一日遡る。

四魔月将の一人、見上げる巨躯のオーガ―ゴーグは、腹をすかしていた。彼は大食漢だから、食べてもすぐに腹が減る。

「食べもの、食べものはどこだぁ」

彼はガラス灯が等間隔に置かれた立派な街道をどしどしと歩いていたが、ここがどこかまったくわかっていなかった。

それどころか、本当は聖乙女を探すためにここにいるはずなのだが、そんなことは腹が減った瞬間にきれいさっぱり忘れていた。

馬車がゴーグのいる方へ土埃を立ててやってくるのが見えた。ゴーグはよだれをたらして笑った。ここはいい。食べ物が次から次へとやってくる。

ゴーグの足元にはすでにばらばらに破壊された馬車と真っ赤に染まった“食い散らかし”が散乱していた。

美しい死を好む霊鳥のヴァイオレットなら眉をひそめることだろうし、三つ頭のキマイラのゾディアックはもっと頭を使えと嘆くだろう。それにパワーデビルのグランデルタ、彼に至っては首を振って何も言わないに違いない。だがゴーグはおいしい部分だけをこうして貪り食うのが大好きなのだ。

魔月は、新月の闇夜の中から生まれ、えさなどなくとも生きられる。

食べ物はいわば嗜好品だった。

地下にいる間は、腹が減ることもない。

だからこの三千年間、ゴーグたち四魔月将は地下で息を潜め、気まぐれに眠る同胞を食すことこそあれ、地上に出て人間を襲うことはなかった。

それが猛き竜の目覚めにより、大いなる戦いが始まり、食欲全開、おおっぴらに人を食せるようになったのだ。

待ちに待った季節がやってきた。次の血肉にかぶりつく悦びに、ゴーグは胸を震わせた。