カイは、リュティアをみつめてぼーっとしていた。

いや、リュティアをじっとみつめることなどできるはずがないので、小さな飾棚の上に置かれた、ピンクの秋桜(コスモス)の一輪ざしにリュティアを重ねてみつめていた。

リュティアとカイの二人は、今日もアクスを探してさまよいながら緋色の道を南下した。

はからずも王都ラヴィアからピューアの村へと帰る一本道だった。

途中小さな町をいくつか通り、そこで赤毛の人物がふらふらと南へ向かったという噂を聞きつけていたが、正確な行方は杳(よう)として知れなかった。

二人は今日も町中を深夜まで探し回り、今やっと宿の一室に落ち着いたところだった。

リュティアがろくに眠らずにアクスを探してくれていることは、カイにとってはありがたいことだった。

アクスのことも気になるが、それ以上にカイのリュティアへの想いは深いのだ。

久々の二人きりという状況に、カイは自分の衝動と戦わなくてはならなかった。

特に夜、好きな人と寝室を共にするのは、拷問のように感じられたから、眠る時間が少ないのはありがたいのだった。