「フューリィ、さっき本を集めるって言ってたよね。家に本を集めるの、趣味なの?」

「本を集めるのは大好きだけど、家じゃないよ。セラフィム様の神殿に置くんだ。そしてセラフィム様に読み聞かせをしてもらうんだよ。セラフィム様の美しい声で聞くと、それはもう、何十倍も物語が面白くなるんだから」

「セラフィム…………」

パールが突然、口をつぐんだ。突然苦いものでも飲みこんだようなその変化に、フューリィが訝しげな視線を向ける。

パールは迷っていた。今まではこの子供に教える義務はないと思ってきたが、無邪気に笑う姿を見てしまうと、黙っているわけにはいかないような気がしてきたのだ。

―セラフィムのことを。セラフィムの真実のことを。

「フューリィ、セラフィムのことだけど…」

―言わなければ…。

「セラフィムは………」

「セラフィム様がどうかした?」

フューリィがにっこりと微笑む。セラフィムという名前を口にするだけで嬉しくてたまらないといった様子だ。

「…………」

―言えない…。

「……いや、なんでもない…」

―言ってしまえばいいのに。なぜ言えないのだろう?

パールには自分がわからなかった。