「25日って、それほんと? セラフィム様! そんなに長い間会えないの? そんなのいやだ」

フューリィがセラフィムにしがみついた。

「すまないフューリィ。これが私の使命なんだ…集中しなければならないから、私が聖具を直している間は、あまりここに来てはいけないよ。いいね」

フューリィは唇を尖らせたが、結局セラフィムの言葉に弱く、しぶしぶ頷く。そんなフューリィの頭を、セラフィムはそっと撫でた。形良い唇が音楽を奏でるように「フューリィ」と呼びかける。

「…ありがとう」

リュティアはそのせりふに少し違和感をおぼえた。だがそれについて深く考える前に「では、行きましょう聖乙女」とセラフィムが顔を上げリュティアをうながしたので、その一瞬の違和感についてリュティアはすぐに忘れてしまった。

湖のすぐそばまで歩み寄ったリュティアは、水を少し両手ですくってみた。するとその清冽(せいれつ)さに驚いた。なんという透明度だろうか。

セラフィムと共にいよいよ湖に飛び込もうとしたとき、カイが急にリュティアの服をつかんで引きとめた。

「リュー、心配だ、私も行こう」

セラフィムが苦笑して応じる。

「お気持ちはわかりますが、やめたほうがいい。神殿は深い所にあります。息が続きません」

「リューだって息が続かないじゃないか。そんな所に行かせるわけにはいかない」

「ご心配には及びません。聖乙女は聖具を身につけています。今の彼女は水中で自由に呼吸ができると、さきほどお教えしたはずです」

「そ、そういえば…でも、本当に?」

「すべての水は星麗の味方です。どうぞ試してみてください。さあ、急ぎましょう」

「カイ、大丈夫です。すぐ戻ります」

安心させるようなリュティアの微笑みを見て、仕方なくカイが手を離した。