「…証明だと?」

「そうだよ! 悲劇の本当の原因を、僕が突き止めてみせる! だからお願い、セラフィム様に攻撃しないで!」

人々の石を投げる手が止まった。フューリィの必死の訴えに心打たれてというよりは、単に白けたという様子だった。または、フューリィを石で打ち殺しては後味が悪いと思ったのか。

村長の老人が厳しい目をフューリィに向けた。

「証明できるものならしてみろ。ただし一週間だ。それを過ぎたらこいつは引っ立てて縛り首だ。やいこの妖怪、我々がこの神殿までたどり着けぬようにしてみろ、かわりにフューリィを縛り首にしてやるからな」

その言葉をしおに、人々はざわめきながら来た道を引き返していった。フューリィの全身から力が抜けた。安心したのか、緊張の糸が切れたのか、なんなのかわからなかった。

「フューリィ、大丈夫かい」

セラフィムが、フューリィの力の抜けた体を背後からそっと支えてくれた。その穏やかな声を聞くと、フューリィの瞳に涙がこみあげてきた。

「セラフィム様こそ、大丈夫なの? セラフィム様…ごめん、ごめんねセラフィム様…僕のせいで、僕がみんなをここに連れてきたせいで、こんな目に…。
全部僕のせいなんだ。セラフィム様がずっと守ってきた聖具だって、僕たちの大事な本だって、僕のせいで壊されてしまったんだもの…! 僕はだめだ、本当にだめだね!」

フューリィは泣くまいと歯を食いしばった。

涙で滲む神殿の中は、カランとして寂しげだ。

以前は、フューリィが都に通っては買い集めた様々な本で埋め尽くされていた。それが一月半ほど前、突然訪れた魔月たちと謎の少年によってすべて焼き払われてしまった。フューリィが人質にとられたために。