「あ…れ…僕は、一体…?」

上体を起こし、きょとんとして首を巡らせる少年の顔色は良く、すっかり正気を取り戻したようだった。

―成功、したらしい。

「大丈夫ですか? ここは村の宿屋です。あなたは“魔の力の気配”にとらわれていたのです」

「魔の力の気配…? それってまさか…僕、例の奇病にかかってしまっていたってこと? 全然、覚えてないけど、お姉さんから流れてきた力ははっきり覚えてる。お姉さんたちが僕を助けてくれたんだね、ありがとう」

少年の素直な言葉に、いまだ静かな緊張感に包まれていたあたりの空気が一気に和んだ。

「僕、フューリィっていうんだ。お姉さんたちは見かけない顔だから、旅の人だね。どうやってお礼をしたらいいだろう…………って、そうだった!! こんなことしてる場合じゃないんだった!!」

少年―フューリィは突然跳ね起きてあたりを見回し、宿の壁に貼られた日めくりの日付を見て血相を変えた。

「タイヘンだっ! 時間がない!」

「??? どうかしましたか」

「どうしよう! どうしよう! あと三日しかない! どうしよう!」

フューリィは頭を抱えて室内を騒がしく行き来したあと、不意に縋るようにリュティアの両手をとった。

「お願い、聖なる力を持ったお姉さん! 僕の大切な人を助けるために、力を貸して!!」