『どうしてこらえるんだい?』

あの日セラフィムの大きな手が頭の上に優しく置かれたのを覚えている。

『だって…恥ずかしいから』

『泣くことは恥ずかしいことじゃない。こらえることはないんだよ』

幼い自分を見下ろす瞳が、たとえようもなく優しく細められたことを覚えている。

『たくさん泣いて、泣いて、また、笑えるようになればいいじゃないか』

―今、僕が笑えるのは、たくさん泣いているからだろうか。

涙をこらえるなと、あの日セラフィムは言った。

今フューリィは涙をこらえていない。

こらえることなど、到底できそうもない。

悲しみは奈落の底のように深いから、この涙は枯れることなどないのだと信じられた。

こんなにも悲しいのに、フューリィの唇は微笑むことができた。なぜだろう。心が深くえぐられて、もう二度と笑うことなどできないほどに傷ついたこんな時、笑えるのはなぜなのだろう。

不思議と気持ちは凪いでいる。セラフィムを失った自分には、これ以上、何も失うものがないからだ。何もない―だから、不思議なことに、どこか安らいですらいるのだ。

固く閉ざされた分厚い木の村門に華奢な背中をつけて、たったひとり、フューリィは佇んでいた。その右手には錆びついたナタが握られている。