「…これを見ろ」

ライトは不意に懐から何かを取り出した。彼の手に握られていたのは小さな水晶球だった。それは今桜色の淡い光を放って輝いていた。

「これはお前の感情だ。お前の感情が、色と光と熱になって、感じられる。俺はずっと、お前の感情を監視してきた」

「感情? 感情を、見てきたのですか?」

リュティアは瞬時に頬を染め、胸元をおさえた。それは少女らしい可憐なしぐさだった。

「お前はいつも何かを想っているな。桜色の光と熱が、それだ」

尋問のような厳しい口調で、ライトは言い募る。

「答えろ。何を想っている? 何を想えば、こんな色と熱になるという?」

「………!!」

そんなことを聞かれる日がくるとは思ってもみなかった。

ライトの視線にまっすぐ射ぬかれて、それに耐えられずにリュティアはうつむく。鼓動は耳元で鳴っているように早鐘を打つ。うつむいた視線の先の水晶球を見なくても、リュティアには答えがわかっていた。ずっと、ずっと、想い続けてきたのだから。目の前の、この人を。

「それは……」

リュティアは言い淀んだ。

頬が熱い。耳まで熱い。

―どうして、わからないのだろう。見ていて、わからないものだろうか。

リュティアはライトを責めたいようなわけのわからない気持ちになった。

視線をさまよわせ、そっと、彼を見上げてみる。

二人の目が合った。リュティアは彼の瞳に吸い込まれそうだと思った。そして、この想いはもう隠しきれるものではないと観念した。

「それは…!」

リュティアは顔をあげ、真正面からライトをみつめた。木々の黄金がライトまで黄金に輝かせているのが眩しくて、リュティアは軽く目を細めた。

「あなたです。あなたのことを、想っているのです! …私はあなたのことが、好きなのです!」

それは、全身全霊の、ありったけの想いを込めた、告白だった。

ライトの瞳が驚愕に見開かれる。

「俺…が…好き…?」