「旅の方、悪いことは言わん。今すぐここを出て行った方がええ。悲劇に巻き込まれたくなければな」

「悲劇…? 悲劇って、あの……」

食事処の店主の老婆はそれっきり、固く口を閉ざしてリュティアの質問に何一つ答えることはなかった。

リュティア、カイ、アクス、パールの四人は、顔を見合わせ首を傾げるばかりだ。

疑問渦巻く四人には、プリラヴィツェの伝統料理山ぶどうのケーキの味もぱさぱさと味気なく感じられた。

ここはプリラヴィツェの緋色の道を西に逸れた場所にある小さな村ピューアだ。

四人はリュティアの持つ石版に記された叙情詩を読むことによって、リュティアが感じられる二つ目の聖具のありか、“プリラヴィツェの西、プリナートの森の神殿”を目指して今日、この村にやってきた。

プリラヴィツェは湖とガラスの国として有名である。

それは繊細なガラス製品が国の主産業であるからというだけでなく、なんと国中の建物のほとんどがガラスで作られているからだ。

もちろんただのガラスではなく、石英、ソーダ、石灰に国家機密の特殊な方法で金属加工を施した強化ガラスであるというが、それでも驚きだ。

この辺境の村でさえも建物はほとんどが透明な強化硝子でできており、人々は思い思いの趣向を凝らしたカーテンを引いてうまく生活空間を隠しながら暮らしている。その眺めはまるで村全体が繊細な硝子細工そのもののようで、情緒にあふれ美しかった。

初めて見る三人はそのことにまず驚いたが、それ以上に村を包む異様なまでの沈鬱さに驚いた。