尋常じゃないクラスの雰囲気を察したのか、

「あー、えーっと。はじめましてみなさん!未月の婚約者の神藤緋音(しんどうあかね)です」

と言った。


(婚約者…?)


知らない。未月に婚約者がいるなんて。
あたしは神藤さんの顔を見ることができなかった。



未月と神藤さんは、あの後学園長の部屋に呼ばれたきり帰ってこなかった。
あたしは、急すぎる出来事に頭がついていかなくてその後どうやって過ごしてたのか覚えてない。

『朱莉さん、帰りましょう』

いつもならそういう未月の声が聞こえるはずなのに、いつまで経ってもその声があたしに掛かることはなかった。

「帰らなきゃ」

あたしは重い腰を上げると、教室を後にした。