「どうも」
シャワーを浴び終えた彼女がドアの向こうから静かに出てきた。
頭にはタオルをかぶせ、だらんと垂れ下がる髪の毛はさっき見たときよりも長く思えた。
「ドライヤーならそこにあるから、勝手に使ってくれて構わないよ。コンセントはベッドの脇にあるから」
「すみません」
不安げな足取りで僕と弟の間を通過していく。
その時、彼女の足の付け根に痣を発見した。
楕円に縁取られた痣は黒紫色に染められ、当たり前のようにそこに居座っていた。
「なあ、あれ……」
「ん?」
「あの痣だよ」
「……それで?」
「それでって……いや、なんでもない」
そう、という弟の声は興味がないなと言いたげだった。
ただ、何も事情を知らないわけでもなさそうだった。
「あの、これでいいんですよね?」
彼女の声に僕は笑顔で返答した。
全ての言動が恐々としている彼女には、どうやらこの空間に未だ慣れない様子だった。
まあ、見知らぬ男の家にいきなりやって来て、まるで自分の家のように寛ぐ女の子もどうかとは思うが。
コードをコンセントに繋げて彼女が髪を乾かし始めたところで、弟が立ち上がった。
「俺も浴びてこようっと」
ドアの閉まる音がすると一瞬だけ彼女の肩が揺らいだ。
ビクついた、と言ったほうが適切かもしれない。
恐らく同じ空間にいるのが僕とだけになってしまったからだろう。
シャワーを浴び終えた彼女がドアの向こうから静かに出てきた。
頭にはタオルをかぶせ、だらんと垂れ下がる髪の毛はさっき見たときよりも長く思えた。
「ドライヤーならそこにあるから、勝手に使ってくれて構わないよ。コンセントはベッドの脇にあるから」
「すみません」
不安げな足取りで僕と弟の間を通過していく。
その時、彼女の足の付け根に痣を発見した。
楕円に縁取られた痣は黒紫色に染められ、当たり前のようにそこに居座っていた。
「なあ、あれ……」
「ん?」
「あの痣だよ」
「……それで?」
「それでって……いや、なんでもない」
そう、という弟の声は興味がないなと言いたげだった。
ただ、何も事情を知らないわけでもなさそうだった。
「あの、これでいいんですよね?」
彼女の声に僕は笑顔で返答した。
全ての言動が恐々としている彼女には、どうやらこの空間に未だ慣れない様子だった。
まあ、見知らぬ男の家にいきなりやって来て、まるで自分の家のように寛ぐ女の子もどうかとは思うが。
コードをコンセントに繋げて彼女が髪を乾かし始めたところで、弟が立ち上がった。
「俺も浴びてこようっと」
ドアの閉まる音がすると一瞬だけ彼女の肩が揺らいだ。
ビクついた、と言ったほうが適切かもしれない。
恐らく同じ空間にいるのが僕とだけになってしまったからだろう。