「着いた~!」
「先輩、本当にお疲れ様です!」
「ここまで来ちゃったね!」
「はい!」

先輩と二人きり。
先輩と笑ってる。
今だけは先輩が、あたしだけのものに感じて。



それから、あたしと先輩は砂に文字や絵を書いたりして遊んだ。
いつも大人っぽい先輩が、子供っぽく見えた。
ギャップがあって可愛かった。

そしてなにより。
あたしだけが先輩のこんな姿を見れてると思うと嬉しくてしょうがない。

こんなことしてたら欲が出てくるに決まってる。
この関係以上になりたいと思ってしまう。
さっき、このままでいいなんていってたのに。

「ふ~、疲れたね!」
「そうですね~。」
「花音ちゃん子供みたいだった!」
「今の空、先輩の名前みたいですね。」
「本当だ!」

先輩の名前は西空夕陽。
オレンジってイメージ。

「…花音ちゃん。」
「なんでしょう?」
「俺、花音ちゃんのこと好き。」

一瞬動揺したけど、嘘だと思った。
先輩は、あたしをよくからかってくる。
きっと真っ赤になる顔を見て面白がってるだけだ。

「そんなからかいは通じませんよ。あたし、大人なんで!」

あえて明るく言ってみる。
嘘だって分かってるのに期待してしまって、寂しくなるのを隠すため。

「そんなのじゃないよ。」
「…は?」